VPP(仮想発電所)とは? 仕組み・DRとの違い・ビジネスモデルをわかりやすく解説

VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)とは、工場や家庭などに点在する太陽光発電・蓄電池・EV・自家発電・生産設備といった分散型エネルギーリソース(DER)を、IoTと制御システムで束ねて遠隔制御し、あたかも1つの発電所のように電力の供給や調整を行う仕組みです。資源エネルギー庁は、需要家側のリソースだけでなく系統に直接つながる発電・蓄電設備も対象に含め、余剰電力を系統へ流す「逆潮流」まで制御対象とする点で、VPPをDR(デマンドレスポンス)と区別しています(※1)。

「VPPとDRは何が違うのか」「VPPで何が売れるのか」「自社は関われるのか」。VPPを調べ始めた担当者が抱く疑問はこの3つに集約されます。一方で、2026年度には家庭用蓄電池やEVなどの低圧リソースが需給調整市場に参加できるようになり、アグリゲーター(特定卸供給事業者)の届出は170社を超えました。数年前の解説では追いつかない部分が増えています。

本記事では、VPPの定義とDRとの違い、リソース・制御・市場の3層の仕組み、VPPが売る4つの価値、メリットと課題、ビジネスモデルと参入の形を整理します。あわせて、VPPに関わる小売電気事業者の視点についても解説します。

  • 1. 
  • VPP(仮想発電所)とは?定義とDR・アグリゲーターとの関係

VPPの定義:分散したリソースを束ねて「1つの発電所」にする

大規模な発電所が1か所で電気を作るのに対し、VPPは小さなリソースを多数束ねて、全体として発電所と同等の機能を作り出します。資源エネルギー庁の定義では、VPPとは「需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、発電所と同等の機能を提供すること」とされています(※1)。

ここで重要なのは「制御」という言葉です。太陽光や蓄電池を持っているだけではVPPにはなりません。通信でつながった多数のリソースを、系統の状況や市場の指令に合わせて同時に動かして初めて、1つの発電所として振る舞えます。この「束ねて動かす」役割を担うのがアグリゲーターであり、動かすための頭脳がEMS(エネルギーマネジメントシステム)と制御システムです。

VPPとDRの違い:逆潮流を含むかどうか

VPPと並んで語られるDR(デマンドレスポンス)は、需要家が電気の使い方を変えることで需給バランスを支える仕組みです。資源エネルギー庁の定義では、DRは「需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること」とされ、需要を減らす下げDRと増やす上げDRに分かれます(※1)。

両者の違いは2点あります。第一に対象範囲です。DRは需要家側のリソースに限られますが、VPPは系統に直接つながる発電設備や蓄電設備も含みます。第二に逆潮流です。DRは需要家の使用量を変えるだけで、電気を系統へ送り出すことは含みません。VPPは蓄電池の放電や自家発電の余剰を系統へ流す逆潮流まで制御対象に含めます。つまりDRはVPPを運用する手段の1つであり、VPPはDRに逆潮流と系統側リソースを加えた、より広い概念です。

VPPを動かす人:アグリゲーター(RA/AC)

VPPの運営者はアグリゲーターと呼ばれ、一般に二層構造で説明されます。需要家と直接VPPサービス契約を結び、個々のリソースを制御するのがリソースアグリゲーター(RA)、複数のRAが制御した電力を集約し、一般送配電事業者や小売電気事業者と取引を行うのがアグリゲーションコーディネーター(AC)です(※1)。1社が両方を担う場合もあれば、電力会社がRA、その子会社がACを担う場合もあります。

2022年4月の改正電気事業法では、アグリゲーターが「特定卸供給事業者」として法律上の位置づけを与えられ、集約する供給能力が1,000kWを超える場合は経済産業大臣への届出が必要になりました。2026年9月1日時点で171社が届出を行っています(※7)。


表1 VPPをめぐる用語の関係

用語

意味

本記事での扱い

詳しい記事

DER(分散型エネルギーリソース)

太陽光・蓄電池・EV・自家発電・生産設備など、点在するエネルギー設備

VPPが束ねる「材料」

分散型エネルギーリソース

DR(デマンドレスポンス)

需要家が電気の使い方を変えて需給を支える仕組み。逆潮流は含まない

VPPの手段の1つ

デマンドレスポンス

VPP(仮想発電所)

DERを束ねて制御し、逆潮流も含めて発電所と同等の機能を提供する仕組み

本記事の主題

本記事

アグリゲーター(RA/AC)

DERを束ねて制御し、市場や電力会社と取引する事業者。1,000kW超は特定卸供給事業者として届出

VPPの運営者

電力アグリゲーター

EMS

リソースを監視・制御するエネルギーマネジメントシステム

VPPの制御層

EMS

  • 2. 
  • なぜ今VPPなのか:2026年時点の3つの背景

再エネの拡大と出力制御:2040年度に再エネ4〜5割

2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年度の電源構成で再生可能エネルギーを4〜5割程度とする見通しを示しました。太陽光は2023年度の9.8%から23〜29%程度へ、風力は1.1%から4〜8%程度へ拡大する見通しです(※2)。天候で出力が変わる電源がここまで増えると、需給を合わせる調整力の必要量も増えます。

同時に、太陽光の発電が需要を上回る昼間には、発電を止める出力制御が各地で行われています。電気が余る時間帯があるということは、蓄電池に電気を蓄え、EVを充電し、需要を昼間にずらすことで吸収できる余地があるということも意味します。VPPは、この「余る時間帯」と「足りない時間帯」の両方に対応できる仕組みとして位置づけられています。出力制御の仕組みと実績は出力制御の解説記事で扱っています。

市場と制度の整備:需給調整市場・容量市場・アグリゲーターの法制化

VPPが事業として成り立つには、束ねた調整力や供給力を売る場所が必要です。国は2016年にERAB(エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス)検討会を設け、2016年度から2023年度までVPP構築の実証事業を行いました(※3)。並行して、調整力を取引する需給調整市場が2021年4月に開設され、供給力を取引する容量市場は2024年度から実需給が始まり、アグリゲーターは2022年4月に特定卸供給事業者として法制化されました。表2に主な流れをまとめます。


表2 VPPをめぐる制度の年表

時期

出来事

VPPにとっての意味

2016年1月

ERAB検討会の設置。2016年度からVPP構築実証事業を開始(2023年度まで)

国が事業化を後押しする枠組みができた(※3)

2021年4月

需給調整市場が開設(三次調整力②から取引開始)

束ねた調整力を売る市場ができた(※4)

2022年4月

改正電気事業法で特定卸供給事業者(アグリゲーター)の届出制が開始

アグリゲーターが法律上の事業者になった(※7)

2024年度

容量市場の実需給開始。需給調整市場で全商品(一次〜三次調整力)の取引開始

kWとΔkWの両方を売れるようになった(※4、※5)

2025年11月

ERABガイドラインの改定

低圧リソースの活用と機器個別計測の方針が示された(※6)

2026年度

需給調整市場で全商品が前日取引・30分コマに統一、低圧リソースの参加が始まる

家庭の蓄電池やEVが調整力になる(※4、※6)

2026年度の転換点:家庭の蓄電池やEVが「調整力」になる

2026年度は、VPPにとって大きな節目です。これまで需給調整市場に参加できるのは、高圧以上で受電する工場やビル、系統に直接つながる蓄電池などに事実上限られていました。2025年11月に改定されたERABガイドラインでは、家庭用蓄電池、EV、エコキュートといった低圧リソースをアグリゲーターが束ねて参加する枠組みと、建物全体ではなく機器ごとに計測する「機器個別計測」の方針が示され、2026年度から運用が始まっています(※6)。数百台、数万台の小さなリソースを束ねて1つの発電所にする。VPPの本来の姿が、制度の上でも実現できるようになったのです。あわせて需給調整市場では、2026年度から全商品が前日取引・30分コマ単位に統一され、天候や稼働状況に応じて前日に応札量を決められるようになっています(※4)。

  • 3. 
  • VPPの仕組み:リソース・制御・市場の3層

リソース層:何を束ねるのか

VPPが束ねるリソースは、電気を「作る」「貯める」「使い方を変える」の3種類に分けられます。それぞれ得意な役割が異なるため、アグリゲーターは複数の種類を組み合わせて、市場が求める応答速度と継続時間を満たします。


表3 VPPを構成するリソースと役割

リソース

種類

VPPでの役割

太陽光発電(出力制御機能付き)

作る

余剰時に出力を抑える下げ方向と、蓄電池と組み合わせた時間帯シフト、単独では上げ方向の調整に限界がある

定置用蓄電池(産業用・系統用・家庭用)

貯める

充電と放電の両方向で調整できる最も柔軟なリソース、逆潮流による売電にも使える

EV・PHEV

貯める

台数が多く合計容量が大きい、ただし駐車中で接続されている台数に依存するため、予測と群管理が前提

自家発電・コージェネレーション

作る

需要側で発電量を増やして系統からの受電を減らす、余剰は逆潮流も可能

空調・生産設備・エコキュート

使い方を変える

下げDRの主力、運転をずらすことで需要の山を削り、谷を埋める

制御層:EMSと通信規格で「1つの発電所」に見せる

市場層:指令を受けてから精算までの流れ

  • 4. 
  • VPPは何を売るのか:4つの価値と収益の仕組み

kW:容量市場で「供給力」を売る

容量市場は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が4年後の供給力を確保するための市場です。VPPは「発動指令電源」として参加でき、年間12回、指令から3時間以内の応動、3時間の継続という要件のもと、待機していること自体に対価が支払われます。応札単位は期待容量1,000kW以上ですが、アグリゲーターが小さなリソースを束ねて1,000kW以上にすれば参加できます(※5)。対価はkW価値に対する固定的な性格が強く、収益の予見性が高い一方、実効性テストと未達時のペナルティがあります。

ΔkW・kWh:需給調整市場で「調整力」を売る

需給調整市場は、一般送配電事業者が周波数制御や需給バランス調整に使う調整力を調達する市場です。商品は応答の速さと継続時間で一次調整力から三次調整力②までの5つに分かれ、VPPが主に参加してきたのは要件の緩い三次調整力②(応動45分以内、継続3時間)です。対価は、待機に対するΔkW価格と、実際に調整した量に対するkWh価格の2階建てで、2026年度からは全商品が前日取引・30分コマ単位に統一されました(※4)。蓄電池を中心に束ねたVPPは、より速い商品への参加も広がっています。

kWh:卸電力市場と小売電気事業者へ「電気そのもの」を売る

需要家価値:電気料金の削減とBCP

1つの蓄電池から複数の価値を取り出す(マルチユース)

これまで説明してきました4つの価値は排他的ではありません。同じ蓄電池が、ある時間帯は容量市場の供給力として待機し、別の時間帯は需給調整市場の調整力として動き、余剰時は自家消費や逆潮流に使われる。これをマルチユースと呼び、VPP事業の収益性を左右する運用技術です。裏返せば、1つのリソースに複数の市場と契約が同時に関わるため、対価の計算と分配は単一の市場に参加する場合より複雑になります。


表4 VPPが売る4つの価値の比較

価値

売り先

対価の性質

参加要件の目安

詳しい記事

kW(供給力)

容量市場(発動指令電源)

待機に対する固定的な対価。未達時はペナルティ

期待容量1,000kW以上(アグリゲートで可)、年12回・3時間応動

容量市場

ΔkW・kWh(調整力)

需給調整市場

待機(ΔkW)と実績(kWh)の2階建て。前日取引で変動

商品ごとの応動時間・継続時間要件。2026年度から低圧リソースも参加

需給調整市場

kWh(電気そのもの)

卸電力市場、小売電気事業者(特定卸供給)

市場価格または相対契約に連動

逆潮流できる設備と計量。特定卸供給は届出

電力アグリゲーター

需要家価値

リソース提供者自身

電気料金の削減、非常時のバックアップ

契約電力・料金メニューの見直し、非常用切替

産業用蓄電池 デマンドレスポンス

  • 5. 
  • VPPのメリットと課題

メリット:系統・需要家・事業者の3つの視点

VPPのメリットは、誰の視点で見るかで異なります。電力系統にとっては、再エネの変動を吸収する調整力が増え、ピークに合わせた発電所や送配電設備の増強を抑えられます。需要家にとっては、保有する設備を収益源に変え、電気料金の削減とBCPを両立できます。事業者にとっては、束ねる技術と運用ノウハウを軸に、電力市場での新たな収益機会が生まれます。表5に、それぞれの視点でのメリットと、裏側にある課題をまとめます。


表5 VPPのメリットと課題(3つの視点)

視点

メリット

課題・注意点

電力系統

再エネの変動を吸収する調整力の確保、出力制御の抑制、設備増強の回避

リソースの信頼性(指令どおりに動くか)の担保、サイバーセキュリティ

需要家・リソース提供者

設備の収益化、電気料金の削減、非常時のバックアップ(デュアルユース)

制御による業務への影響、報酬の予見性、契約条件(ペナルティ)の理解

事業者(アグリゲーター・小売)

市場での収益機会、顧客との関係強化、再エネ余剰の活用

計測・ベースラインの確定、複数市場にまたがる精算、届出とセキュリティ体制

課題1:収益の予見性と計測・ベースライン

課題2:サイバーセキュリティと機器連携(ERABガイドライン)

VPPは多数の設備を遠隔で制御するため、制御システムが不正にアクセスされれば、需要家の設備だけでなく電力系統にも影響が及びます。経済産業省はERABガイドラインとあわせて、アグリゲーターやリソース提供者が守るべき対策をまとめた「ERABに関するサイバーセキュリティガイドライン」を示しており、特定卸供給事業者の届出時には、供給能力とともにサイバーセキュリティの体制が確認されます(※6、※7)。

もう1つの課題は機器連携です。メーカーの異なる蓄電池、EV充電器、空調を同じ仕組みで制御するには、通信規格への対応とデータ形式の統一が必要です。OpenADRやECHONET Liteといった標準規格の普及とともに、2025年11月改定のERABガイドラインでは低圧リソースの計測・制御の要件が整理され、家庭用機器を束ねるための土台が整いつつあります(※6)。

  • 6. 
  • VPPのビジネスモデルと参入の形

アグリゲーターモデル:束ねて市場で売る

需要家や発電事業者のリソースを集め、制御し、容量市場や需給調整市場、小売電気事業者へ価値を売るモデルです。関西電力グループでは、関西電力がリソースアグリゲーターとして顧客と直接契約し、子会社のE-Flowがアグリゲーションコーディネーターとして市場取引を担う二層構造をとっています(※8)。電力会社系のほか、IT・製造業系、蓄電池事業者、地域新電力など参入の背景は多様で、2026年9月1日時点で171社が特定卸供給事業者として届出を行っています(※7)。収益は市場からの対価とリソース提供者への分配の差、そして制御・運用の効率で決まります。

リソース保有モデル:蓄電池・再エネ事業者が自らVPPに参加する

自らリソースを保有し、アグリゲーターと契約して、または自ら届出を行ってVPPに参加するモデルです。系統用蓄電池は容量市場・需給調整市場・卸電力市場のマルチユースを前提に事業化が進んでおり、工場やビルの産業用蓄電池は自家消費とDR参加を組み合わせる形が中心です。FIP制度に移行した太陽光や風力の発電事業者にとっても、蓄電池を併設して売電のタイミングを最適化し、余剰を調整力として提供することが新たな収益機会になります。系統用蓄電池の事業性とマルチユースの考え方は、系統用蓄電池の解説記事で紹介しています。

地域VPP・マイクログリッドモデル:自治体・地域新電力

参入のステップと届出(特定卸供給事業者(アグリゲーター))

VPP事業への参入は、おおむね次の5段階で進みます。第一にリソースの棚卸しです。自社や顧客が持つ蓄電池・自家発電・生産設備の容量、応答速度、制御可能な時間帯を把握します。第二に参加形態の選択です。既存のアグリゲーターと契約するか、自ら特定卸供給事業者として届出を行うかを決めます。第三に制御・計測の整備で、EMSやゲートウェイの導入、通信規格への対応、30分値または機器個別の計測体制を整えます。第四に市場登録で、容量市場の応札や需給調整市場の事前審査、実効性テストへの対応を行います。第五に運用と精算です。日々の指令対応、実績の確定、リソース提供者への分配を回します。

届出については、集約する供給能力が1,000kWを超える場合に特定卸供給事業者としての届出が必要で、許可制ではなく届出制です。ただし届出後に供給能力とサイバーセキュリティの体制が確認されるため、事前の準備が欠かせません(※7)。

  • 7. 
  • 小売電気事業者にとってのVPP

なぜ小売電気事業者がVPPに関わるのか:供給力・インバランス・再エネ余剰

関わり方の3パターン:自社で束ねる、アグリゲーターと組む、メニューで誘導する

小売電気事業者のVPPへの関わり方は、制御の主体をどこに置くかで3つに分かれます。表6に、それぞれの要件と実務負荷を整理します。


表6 小売電気事業者のVPP関与パターン

パターン

内容

要件

収益・効果

実務負荷

自社で束ねる

自社の需要家のリソースを自ら制御し、市場や自社の供給力に使う

特定卸供給事業者の届出(1,000kW超)、制御システム、計測、セキュリティ体制

市場収益の全部、インバランス・調達コストの低減

高い。運用・入札・精算をすべて自社で担う

アグリゲーターと組む

既存アグリゲーターに需要家を紹介し、制御と市場取引を委ねる

アグリゲーターとの提携契約、需要家との三者の契約整理

収益の分配、需要家との関係強化

中程度。精算と需要家対応の分担を決める必要

メニューで誘導する

時間帯別・市場連動型の料金メニューで需要家の行動を誘導する(制御はしない)

料金メニューの設計、30分値データの取り込み、請求への反映

調達コストとインバランスの抑制

低〜中程度。ただし料金計算と請求の複雑さは増す

どのパターンでも、需要家との契約と精算の仕組みが変わる点は共通です。

VPPが持ち込む実務課題:1つの需要家に複数の価値と契約

精算とデータ基盤

この精算を回すには、まず役割分担を決める必要があります。VPPやDRの業務は、リソースを計測し制御する層、需給調整市場や容量市場に応札して市場と精算する層、需要家と契約し料金を計算して請求する層の3つに分かれ、前の2つはアグリゲーター側のシステムの領域です。3つ目の層は、小売電気事業者の料金計算システム(CIS)が担います。具体的には、スマートメーターの30分値を取り込み(データの流れはMDMSの解説記事で扱っています)、需要家ごとの契約条件(参加メニュー、還元の方法)を保持し、アグリゲーター側で確定したDR実績や対価を受け取って、使用量の請求や逆潮流分の買取と合わせて請求書に反映し、需要家に実績を通知する、という流れです。この一連の流れが、月次で、需要家の数だけ発生します。

現場でよくあるのは、「VPPや蓄電池連携のメニューを始めたが、精算が表計算では回らなくなった」という状況です。参加需要家が数十件のうちは手作業でも対応できますが、数百件を超え、市場が複数にまたがると、契約条件の管理と精算の突合が業務の限界を超えます。VPPに関わる小売電気事業者にとっては、制御の仕組みと同じくらい、契約・30分値・請求を一元的に扱うデータ基盤を先に整え、アグリゲーターとの役割分担(顧客情報をどちらが正として持つか、30分値をどちらが取得して共有するか、DRの対価を請求書の割引にするか別払いにするかなど)を決めておくことが、事業を継続させる条件になります。

Unisrv 電力CISは、電力小売事業者の契約・料金計算・請求を担う顧客情報管理の基盤です。リソースの制御や市場との精算は現在のUnisrv 電力CISの対象ではありませんが、アグリゲーター側で確定した対価を需要家の請求に反映する、小売側の最後の工程を担います。詳しくはサービス紹介ページをご覧ください。

  • 8. 
  • VPPに関するよくある質問

Q. VPPとDRは何が違うのですか?

Q. VPPと蓄電池の関係は何ですか?

Q. 家庭の蓄電池やEVもVPPに参加できますか?

Q. VPPに参加すると収益はどのくらいになりますか?

Q. VPP事業を始めるには許認可が必要ですか?

Q. 小売電気事業者はVPPで何ができますか?

  • 9. 
  • Unisrv 電力CISが担う範囲:VPP時代の契約・料金計算・請求

ユニファイド・サービスの「Unisrv 電力CIS」は、電力小売事業者の契約・料金メニュー・需要データを一元管理する顧客情報管理クラウドサービスです。担う範囲は小売事業の顧客・契約・請求の層であり、リソースの制御、需給調整市場や容量市場への応札、市場やアグリゲーターとの精算は、現在のUnisrv 電力CISの対象ではありません。VPPに関わる運用では、需要家ごとのVPP参加メニューと還元条件を契約情報として保持し、30分値に基づく使用量の請求と逆潮流分の買取を一体で処理し、アグリゲーター側で確定したDR実績や対価を割引や明細として請求書に反映する、という役割分担になります。反映の仕方は契約ごとに異なるため、料金メニューの設計段階からご相談ください。

時間帯別料金や市場連動型メニュー、再エネメニューといった商品設計の土台として、また表計算に依存した請求の工数とミスを減らす基盤として、電力CISをご活用ください。詳しくは、資料と無料相談をご利用ください。


  • 10. 
  • まとめ:VPPは「束ねる技術」から「価値を売る事業」へ

・ VPPは、点在するDERを制御システムで束ね、逆潮流も含めて1つの発電所のように動かす仕組み。DRは需要側の制御に限られ、VPPの手段の1つ

・ 仕組みはリソース層・制御層・市場層の3層。運用実務の重心は制御より計測と精算にある

・ VPPが売る価値は、kW(容量市場)、ΔkW・kWh(需給調整市場)、kWh(卸電力市場・小売の供給力)、需要家価値の4つ。1つの蓄電池から複数の価値を取り出すマルチユースが収益性を左右する

・ 2026年度は転換点。低圧リソースの需給調整市場参加と機器個別計測が始まり、需給調整市場は全商品が前日取引に。特定卸供給事業者は171社(2026年9月1日時点)

・ 小売電気事業者にとってVPPは、供給力・インバランス・再エネ余剰の手段。契約と精算の単位が増えるため、データ基盤の整備とアグリゲーターとの役割分担が事業化の前提

VPPは、実証事業の段階から、市場で価値を売る事業の段階へ移りました。リソースを持つ側は自社の設備が生む価値を正しく把握し、束ねる側は制御と同じだけ精算の仕組みを整える。この順番を守ることが、VPPを一過性の取り組みで終わらせない鍵となります。

  • 11. 
  • 参考・引用元

・ ※1 資源エネルギー庁「VPP・DRとは」(VPP・DR・アグリゲーターの定義):https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html

・ ※2 資源エネルギー庁「エネルギー基本計画について」(第7次エネルギー基本計画、2025年2月閣議決定):https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/ / 資源エネルギー庁「『エネルギー基本計画』をもっと読み解く③」:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku2025_kaisetu03.html

・ ※3 資源エネルギー庁「VPP・DR普及に関する施策」(ERAB検討会、実証事業の実施期間):https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/measure.html

・ ※4 電力需給調整力取引所「需給調整市場とは」および「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール(第6版、2026年3月)」:https://www.eprx.or.jp/outline/outline.html

・ ※5 電力広域的運営推進機関「容量市場 参加要件について」(発動指令電源の要件):https://www.occto.or.jp/capacity-market/youryouteikyou/main/requirement

・ ※6 経済産業省「『エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスに関するガイドライン』を改定しました」(2025年11月19日):https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251119001/20251119001.html / 資源エネルギー庁「バーチャルパワープラント・ディマンドリスポンスについて」(ERABガイドライン、ERABに関するサイバーセキュリティガイドラインの掲載ページ):https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/

・ ※7 資源エネルギー庁「特定卸供給事業者一覧」(2026年9月1日更新、171社):https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/009/list/aguri-list.html / 資源エネルギー庁「特定卸供給事業の届出に係る事業者説明会」(2022年3月):https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/009/shiryou/06_shiryou1.pdf

・ ※8 関西電力「VPP(仮想発電所)による新エネルギービジネス」:https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/vpp/index.html

・ ※9 東北電力「VPP事業の取り組み」:https://vpp.tohoku-epco.co.jp/case/

最終更新日:2026年10月15日(公開日:2025年12月9日)

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この記事の著者

  • 甲斐 博一

    ユニファイド・サービス株式会社 CMO

    グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。

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