新電力とは?大手電力との違い・選び方と事業の仕組み

新電力とは、地域の大手電力会社とは別に、電力の小売自由化を機に電気の販売を始めた事業者のことです(※1)。大きな発電所を持つことを参入の前提とせず、卸電力取引所での購入、発電事業者との契約、自社の発電設備を組み合わせて電気を仕入れています。仕入れ方が違えば料金の組み立て方も変わり、単価を固定したプランもあれば、市場の価格に合わせて単価が動くプランもあります。

送配電網は、契約先がどこであっても地域の一般送配電事業者が運営しています。契約先を変えても、届く電気や停電の起きやすさに違いは出ません。違いが出るのは、電気の仕入れ方と料金の決め方です。本記事の数値や制度は、2026年10月時点の公表資料によります。

  • 1. 
  • 新電力とは

「新電力」は、法律で定められた区分の名前ではありません。大手電力会社も新電力も、電気事業法上は同じ「小売電気事業者」で、事業を始めるには国への登録が要ります(※2)。そのうち、旧一般電気事業者の小売部門を引き継いだ10社(制度上は「みなし小売電気事業者」。本記事ではこれを大手電力会社と呼びます。東京電力エナジーパートナーや中部電力ミライズのように、小売が別会社になっているものも含みます)以外の事業者をまとめて新電力と呼んでいます(※9)。資源エネルギー庁の統計では、大手電力会社の子会社も新電力に含めて数えています(※3)。

呼び名自体は、全面自由化より前からありました。全面自由化の直前でも、新しく参入した事業者が電気を売れるのは契約電力50kW以上の需要家までで、家庭には供給できませんでした。電気事業法上は「特定規模電気事業者」、略してPPS(Power Producer and Supplier)と呼ばれていましたが、全面自由化で事業の区分が整理され、この区分はなくなりました(※1)。

電力自由化で契約先を選べるようになった

自由化の前は、発電から送配電、小売までを地域ごとに1社の電力会社がまとめて担っていました(※4)。料金は、必要な費用に利潤を加えた額をもとに決める「総括原価方式」で定められていました(※5)。

小売の自由化は、契約の規模が大きい区分から順に進みました(※6)。2000年3月に大規模な工場やオフィスビルなどの特別高圧が対象となり、2004年4月と2005年4月には中小規模の工場やビルが使う高圧へ広がりました。2016年4月には一般家庭や小さな店舗が使う低圧も加わり、どの需要家も電力会社と料金メニューを選べる全面自由化が実現しました(※1)。表1に段階をまとめます。


表1 電力小売自由化の段階

時期

自由化された区分

主な需要家

2000年3月

特別高圧

大規模な工場、大型のオフィスビル

2004年4月・2005年4月

高圧

中小規模の工場、ビル、スーパーなど

2016年4月

低圧(全面自由化)

一般家庭、小さな店舗や事務所

出典:資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」(※1)


自由化の経緯や同時同量の考え方は、新電力と電力自由化の解説コラム(内部リンク:https://unisrv.jp/knowledge/column/electricity-liberalization/|旧URL:https://unisrv.jp/knowledge/column_cis_003.php)で詳しく扱っています。

どんな会社が参入しているのか

もともと電気以外の事業を営んでいた企業の参入が目立ちます。ガス会社や通信会社が立ち上げた事業者には、電気とガス、電気と通信サービスをまとめて割り引くプランを用意しているところがあります(※7)。石油元売や商社、鉄道会社が設立した事業者もあります。地元の発電所でつくった電気を地域の需要家に販売する事業者や、自治体が運営に関わる事業者もあります(※1、※7)。

国に登録している小売電気事業者は、2026年3月末時点で808件です(※8)。販売電力量でみた新電力のシェアは2026年3月時点で約21.9%、国内で販売される電気の5分の1あまりにあたります。家庭などの低圧に限ると約26.1%に上がります(※3)。最新の登録数は、資源エネルギー庁の「登録小売電気事業者一覧」に掲載されています(※9)。

  • 2. 
  • 電気は誰が届けているのか

発電・送配電・小売の3つに分かれている

電気事業は、電気をつくる発電、送電線や配電線で電気を運ぶ送配電、需要家と契約を結んで電気を売る小売の3つの部門で成り立っています(※6)。

地域の基幹的な送配電網は、全国を10に分けたエリアごとに、一般送配電事業者が1社ずつ運営しています(※4、※10)。電気事業法には、送電事業者、配電事業者のほか、特定送配電事業者という区分もあります(※2)。小売電気事業者は、仕入れた電気をこの送配電網に乗せて需要家へ届け、送配電網の利用料として託送料金を払います。この点は、大手電力会社の小売部門でも新電力でも変わりません(※5)。


【図1】発電から送配電、小売、需要家に至る電気と契約の流れ

発電所から送配電網を通って需要家に届く電気の流れと、小売電気事業者が発電事業者・一般送配電事業者・需要家と結ぶ契約の流れ.png

契約先を変えても電気の質は変わらない

届く電気の性質は、契約先が新電力でも大手電力会社でも同じです。発電所でつくられた電気は、送配電網のなかでほかの発電所の電気と混ざって届くためです(※11)。

周波数や電圧を一定に保つのも、送配電設備の故障で起きた停電を復旧させるのも、地域の一般送配電事業者です(※11)。そのため、停電の起きやすさや復旧の手順は、同じ地域なら契約先にかかわらず共通です。

国の指針は、電源によって届く電気の質が変わるかのような説明を、問題となる行為としています。例に挙がっているのは、「きれいな電気が届く」「周波数や電圧が安定している」といった言い方です(※11)。

契約先が撤退しても電気は止まらない

いま契約している事業者が小売の事業をやめても、電気がすぐに止まるわけではありません。事業をやめる事業者は、低圧の需要家には60日前まで、高圧・特別高圧の契約や、契約者が1万件以上いる事業では90日前までに、そのことを知らせる決まりです(※11)。

次の契約先が決まらないときの受け皿は、契約の区分で違います。高圧・特別高圧向けには、一般送配電事業者の最終保障供給があります。低圧の家庭などでは、経過措置料金で大手電力会社が行う供給(制度上の名称は特定小売供給)がこの役割を果たしています。経過措置がなくなった後は、低圧向けの最終保障供給約款も一般送配電事業者が設け、それにもとづいて供給することとされています(※11、※12)。

どちらも自動では切り替わりません。新しい契約を結ぶか、最終保障供給(低圧では特定小売供給)を申し込まないままでいると、無契約の状態となり、電気の供給を止められるおそれがあります(※11)。

  • 3. 
  • 新電力はどこから電気を調達しているのか

新電力の仕入れ先は、卸電力取引所、発電事業者との相対契約、自社やグループ会社の発電設備に大きく分かれます。どれにどれだけ頼るかで、市場価格が動いたときの影響の受け方が変わり、それが料金プランの設計にも表れます。表2に3つの経路の特徴をまとめます。


【図2】新電力の電気の調達経路

小売電気事業者が卸電力取引所、発電事業者との相対契約、自社やグループの発電設備の3つの経路から電気を調達する構造.png


表2 3つの調達経路と価格変動の受け方

調達経路

価格の決まり方

市場価格が動いたときの影響

特徴

卸電力取引所(JEPX)

30分ごとの入札で日々決まる

直接受ける

量の調整がしやすい。値動きが大きい

発電事業者との相対契約

当事者間で事前に取り決める

固定の条件なら抑えられる。価格が動く条件もある

長期契約では固定費の一部負担を伴う例もある

自社・グループの発電設備

燃料費や設備の維持費で決まる

市場価格よりも燃料費に左右される

高騰時の備えになる。設備の種類は母体の業種で異なる

出典:日本卸電力取引所「取引概要」(※13)、経済産業省「市場リスクマネジメントに関する参考事例集」(※15)をもとに作成

卸電力取引所から調達する

卸電力取引所は、電気を売りたい事業者と買いたい事業者が取引する市場です。日本卸電力取引所(JEPX)の取引で代表的なのが一日前市場(スポット市場)で、翌日に受け渡す電気を前日に売り買いします。1日を30分ずつ48の商品に分けて取引し、価格も30分ごとに入札で決まります。当日に取引する時間前市場のほか、先の期間の電気を取引する先渡市場やベースロード市場なども存在しています(※13)。

価格は需給によって大きく動きます。2021年1月には需給のひっ迫で一時1kWhあたり250円を超え、反対に太陽光発電などの供給が多い時期には0.01円まで下がることもあります(※14)。市場からの調達が多い事業者ほど、こうした値動きが仕入れ値に直接響きます。

発電事業者と相対契約を結ぶ

相対契約は、発電事業者と1対1で条件を取り決めて電気を買う方法です。量や価格を前もって固めておけば、市場価格が上がっても仕入れ値への影響を抑えられます。国の参考事例集には、商社が持つ発電所と10年以上の相対契約を結び、その発電所の固定費の一部も負担している小売電気事業者の例が載っています(※15)。

一方で、燃料価格や市場価格に合わせて価格が動く条件を当事者どうしで付けることもあり、相対契約だから値動きと無縁だとは限りません。

自社で発電設備を持つ場合もある

自社やグループ会社の発電設備から電気を調達する新電力もあります。親会社がガス火力発電所を持つ事業者や、再生可能エネルギーの発電設備を持つ事業者など、どんな電源を持つかは母体となる企業の業種で違ってきます。自社電源の割合が大きいほど、仕入れ値は市場価格よりも、燃料費や設備の維持費に左右されやすくなります。

自社電源は、市場価格が跳ね上がったときの備えにもなります。先ほどと同じ事例集には、ふだんは日中だけ動かしている自社の発電所を、市場価格が高騰した2021年1月には夜間も含めて24時間動かした例があります(※15)。

調達の組み合わせが料金プランを決める

市場、相対契約、自社電源をどう組み合わせるかに、決まった形はありません(※15)。市場から買う割合が高いほど価格変動の影響を受けやすいのが一般的ですが、相対契約の価格の決め方や、先物取引などで値動きに備えているかどうかによって、実際の受けやすさは変わります。

調達の中身と料金の決め方が、そのまま対応しているとも限りません。大手電力会社の料金が比較の基準になっているため、自社の電源構成とは合わなくても、大手と同じ燃料費調整を使っている新電力もあります(※12)。

小売電気事業者の側から見ると、調達の設計と料金メニューの設計は切り離せず、どの経路をどの比率で組むかが、その事業者の性格を決めます。参考事例集に載っているある事業者は、調達する電気の多くがFIT電源で、仕入れ値が市場価格に連動していました。燃料費調整単価とは動きが合わないため、燃料費調整の変動の一部だけを料金に反映するメニューに改めています(※15)。こうして組み立てた料金メニューを、契約ごとの条件と毎月の請求に正しく反映する仕組みについては、電力CISの資料にまとめています。

  • 4. 
  • 大手電力会社との違い

事業モデルの違い

大手電力会社は、グループのなかに発電設備を持ち、それぞれの地域で長く電気を供給してきました。新電力は、発電設備を持っていなくても、国の登録を受ければ小売に参入できます(※2)。

大手電力会社では、2020年4月までに送配電部門が別会社に分かれました(法的分離。沖縄電力は対象外)(※4)。別会社にすることが求められたのは送配電部門だけで、発電と小売をどう持つかは会社ごとに違います。関西電力や九州電力のように発電と小売を1社で営む会社もあれば、東京電力グループのように持株会社の下で発電会社と小売会社(東京電力エナジーパートナー)に分かれている会社、中部電力のように小売だけを別会社(中部電力ミライズ)にした会社もあります。いずれも、小売の部分は新電力と同じ小売電気事業者として登録されています(※9)。

分かれた一般送配電事業者は、原則として小売電気事業や、小売向けの発電事業を営むことができません(※2)。「原則」の例外にあたるのが離島で、離島の需要家への供給(離島等供給)は、一般送配電事業の一部として一般送配電事業者が受け持っています(※2)。


料金プランの設計の違い

大手電力会社には、国の規制を受ける料金(規制料金)が経過措置として残っています。家庭向けの従量電灯はその一つで、使う電気が増えるほど1kWhあたりの単価が段階的に上がる三段階料金です(※16)。規制料金のほかに、自由料金のプランも用意しています。この経過措置に法律上の期限はありません。全面自由化の時点では2020年4月の撤廃が想定されていましたが、2019年に、エリアごとに競争の状況を確認し、基準を満たしたエリアから解除する方式に改められました。基準は、消費者の認知や切り替えの状況、大手電力会社以外にシェア5%以上の有力な競争者が2者以上いること、競争が続く条件が整っていることの3つです。2026年6月の電力・ガス取引監視等委員会の確認では、沖縄エリアだけが基準を満たす見込みと判断され、ほかの9エリアでは規制料金が続いています(※22)。

新電力の料金は、すべて自由料金です。使用量にかかわらず単価が一定のプラン、時間帯で単価が変わるプラン、市場価格に連動するプランなど、組み立て方に幅があります。

料金が抑えられる場合がある理由

新電力の料金が大手電力会社より低く設定されることがあるのは、費用のかかり方や事業の組み立て方が違うためです。

発電設備を持たない事業者は、設備を自社で維持する必要がありません。ただ、他社から買う電気の値段には、その発電設備の維持費も含まれているのが一般的で、設備を持たないことがそのまま安さにつながるわけではありません。

調達の組み合わせを、自社の需要の形に合わせて組めることも料金に関係します。参考事例集には、昼夜を通して安定して使われる需要(ベース需要)が少なく、長期の相対契約では安く調達できない事業者の例があります。この事業者は、期間を短く区切って調達したり、需給管理のグループ(バランシンググループ)を組む事業者どうしでまとめて調達したりし、よりよい条件を探しています(※15)。

ガスや通信などの既存事業と一緒に販売すれば、顧客を集める費用や請求の手間を事業どうしで分け合える場合もあります。ただし、燃料や市場の価格が上がる時期には、仕入れ値の上昇が料金に表れやすく、大手電力会社より高くなることもあります。

契約条件とサービスの違い

新電力には、ガスや携帯電話とのセット割引や、ポイントの付与を用意している事業者があります(※1)。契約期間の決め方や、期間の途中で解約したときの条件も事業者によって違います。

再生可能エネルギーの比率が高い電気を売りにしたプランもあります。電源構成を公表するかどうかは事業者が決めますが、公表する場合の算定や開示の方法には国の指針があり、根拠なく算定した数字を示すことは問題となる行為とされています(※11)。再エネ由来の電気として販売する際に使われる証書の仕組みは、非化石証書の解説記事で扱っています。

変わらないこと

契約先を変えても、送配電網、届く電気の質、停電時の対応は同じです(「契約先を変えても電気の質は変わらない」の節を参照)。送配電網は法的分離の後もエリアごとに1社の一般送配電事業者が運営し(※4)、その利用料金である託送料金は、2023年4月からレベニューキャップ制度のもとで国の審査を受けて決められています(※10)。

  • 5. 
  • 料金プランの型と、価格変動の受け方

燃料や電気の市場価格が上がったとき、請求額がどう動くかはプランの型で違い、調整項目の名前や計算の中身も事業者によって異なります。国の小売営業指針は、料金メニューの参考事例として、定額の料金、単価を固定した料金、燃料費や市場価格に応じて調整する料金を挙げています。調整する料金はさらに、調整に上限を設ける型、一定の幅までは調整しない型、上限も幅も設けずに連動させる型に分けられています。型ごとに、需要家と事業者の双方にとっての利点と注意点も示されています(※11)。表3に、本記事で扱う型と価格変動の受け方をまとめます。


表3 料金プランの型と価格変動の受け方

型

単価の決まり方

燃料・市場価格が上がったときの請求額

契約前に見るところ

固定単価型

1kWhあたりの単価を契約で固定

単価は動かない。燃料費調整などの調整項目が付いていれば、そこを通じて動く

調整項目の有無と計算の基準

市場連動型

卸電力取引所の価格に連動

価格の上下がそのまま表れる。30分ごとか月平均かで受け方が違う

連動の単位(30分/月平均)、上限の有無

調整項目付き(燃料費調整・電源調達調整費など)

基本の単価に、毎月算定する調整単価を加減

調整単価の算定方法と上限の有無で変わる

項目の名称ではなく算定方法と上限

出典:経済産業省「電力の小売営業に関する指針」4(2)参考事例(※11)をもとに作成


小売電気事業者の側では、料金プランの型は調達の設計とあわせて組み立てます。日々値段が動く調達の割合が大きければ、その動きを料金でどこまで需要家と分け合うかを決めておく必要があるためです。

ここで挙げる型は、どの小売電気事業者にも共通する分類です。違いが出るのは、どの型を、どんな単価と調整条件で、どの需要家に向けて出すかという組み立てで、この料金メニューの設計そのものが新電力の競争力になっています。新電力の競争力の源泉となる料金メニューの開発には、従来多くの時間とコストがかかっていましたが、Unisrv 電力CISの導入によって柔軟性とスピードが格段に上がったという声を多くいただいています。


固定単価型

固定単価型は、1kWhあたりの電力量料金の単価を契約で決めておく型です。燃料価格や市場価格が上下しても、この単価は動きません。国の指針が例に挙げる「単価を固定した料金」は調整項目のないものを指しますが(※11)、固定単価型には燃料費調整などが別に付くものも含まれます。

ただ、毎月の使用量が変わらなくても、請求額は変わることがあります。単価とは別に燃料費調整額などの調整項目があれば、そこを通じて燃料価格の変動が加わるからです。単価と合わせて、どんな調整項目が付いているかも見ておきます。

市場連動型

燃料費調整額と、会社ごとに異なる調整費

燃料費調整額は、火力発電に使う燃料の値動きを電気代に反映させる仕組みで、単価は各社が毎月算定して公表します(※17)。これとは別に、電源調達調整費などの名前で調整項目を設けている事業者もあり、同じ名前でも計算の中身は会社ごとに違います。請求書の項目名だけでは何が反映されているのか分からないため、何を基準にどう計算するのかを、約款や料金プランの説明で確かめる必要があります。計算方法や上限の仕組みは、燃料費調整額の解説記事で扱っています。

一方、再エネ賦課金は国が年度ごとに単価を定め、全国どこでも同じ単価がかかるため、契約先で差は出ません(※5)。負担額は使った電気の量に比例し、電気を大量に使う事業者向けには減免の制度もあります(※18)。単価の推移と減免の申請は、再エネ賦課金の解説記事で扱っています。

規制料金と自由料金の違い

規制料金(経過措置料金)は、料金そのものを値上げする際に経済産業大臣の認可を受けなければならない料金です(※5)(「料金プランの設計の違い」の節を参照)。自由料金は、事業者が自ら定めて契約条件として提供することができます。燃料費調整の決まりも、規制料金と自由料金で異なります。規制料金では燃料費調整の仕組みを設けることが義務づけられ、反映できる燃料価格に上限(基準燃料価格の1.5倍)があります(※17)。自由料金には上限の決まりがなく、付けるかどうか、どの水準にするかは事業者の判断です。燃料価格が大きく上がる時期には、上限の有無が請求額の差になって表れます。

電気料金の内訳全体と請求書の見方は、電気料金の仕組み・内訳の解説記事で扱っています。調整項目が複数あるプランや市場連動のプランでは、小売電気事業者の側で毎月の単価改定を契約ごとに正しく料金計算へ反映する実務が生じます。

  • 6. 
  • 新電力を選ぶときに見るところ

切り替え前に知っておきたい注意点

切り替えを決める前に、次の3点は押さえておきます。

・ 燃料価格や市場価格の動きが電気代にどう表れるかは、料金プランの型で違う(「料金プランの型と、価格変動の受け方」の節を参照)

・ 契約期間の定め方や解約の条件は、事業者によって違う(「契約期間と解約条件を確認する」の節を参照)

・ 契約先が事業をやめても電気はすぐには止まらないが、次の契約先は自分で探す必要がある(「契約先が撤退しても電気は止まらない」の節を参照)

小売電気事業者の側から見ると、需要家がここで確かめる点は、そのまま事業者が設計し、開示している部分です。料金の決まり方や契約条件を分かりやすく示すことも、料金メニューづくりの一部になります。

自分の使用量と使い方を把握する

契約先を選ぶ前に、毎月どれくらい電気を使い、どの時期や時間帯に多く使っているかを確かめておきます。月ごとの使用量と請求額は、検針票や請求書のほか、契約先のWebサイトでも確認できます(※11)。

見ておきたいのは、季節による増減、時間帯の偏り、契約の大きさの3点です。夏や冬に使用量が増えるのか、特定の時間帯に使用が集まっているのかで、合うプランは変わります。スマートメーターのデータをもとに、30分ごとの使用量をWebサイトで見られる事業者もあります。契約の大きさは、家庭では契約アンペアなど、高圧の契約では契約電力(kW)で示されています。

料金プランの型が使い方に合っているか

どの型が向いているかは、使う時間帯と量で変わります。市場連動型が合うのは、価格の安い時間帯に使用を動かせる場合です(「市場連動型」の節を参照)。反対に、使う時間を動かしにくく、需要が増える夏や冬に使用が集中する場合は(※14)、市場価格の上昇が請求額に表れやすくなります。たとえば在宅時間が長く、洗濯や食器洗いを昼に回せる家庭なら、太陽光発電が多く、市場価格が下がることもある昼の電気を使いやすくなります。毎月の電気代の見通しを立てやすくしたいなら、固定単価型が候補になります。

契約期間と解約条件を確認する

契約期間や、途中でやめるときの条件は事業者によって違います。1年契約で、途中でやめると解約金が発生するプランもあれば、期間を決めずに契約するプランもあります。自動で更新されるか、更新のときに条件が見直されるかも見ておきたい点です。

こうした条件は、供給約款と、契約の前に受ける説明で確かめられます。説明と一緒に書面を受け取り、契約した後にも改めて書面が届きます。電気事業法が、契約前の説明と書面、契約後の書面を、それぞれ事業者に義務づけているためです(※2、※11)。国の指針は、無契約の状態になった場合の手続きや最終保障供給についても、契約のときなどに説明することが望ましいとしています(※11)。

供給エリアを確認する

電気を売るエリアは新電力によって違い、特定の地域だけで販売している事業者もあります。従って、住まいや事業所の所在地が対象に入っているかを、最初に確かめておく必要があります。

マンションやアパートでも、各住戸が小売電気事業者と直接契約している(各戸に電力会社のメーターがある)のが一般的で、その場合は戸建てと同じように契約先を選べます(※23)。例外は、管理組合などが建物全体で高圧一括受電の契約を結んでいる場合で、このときは電気事業法上の需要家が管理組合などになるため、各住戸が個別に電力会社を選べないことがあります(※11)。自分の住まいがどちらかは、検針票に小売電気事業者の名前があるか、管理組合に確認すれば分かります。

法人の契約では、確かめることが増えます。契約電力の区分、燃料費調整に上限があるか、市場価格に応じた調整を併用しているかに加えて、新規の受付状況も見ておきます。2026年前半には、燃料価格の高騰を受けて、特別高圧・高圧で新たな契約の受付を止める事業者も出ました。高圧・特別高圧の燃料費調整と市場価格調整の仕組みは、燃料費調整額の解説記事の高圧・特別高圧の章で扱っています。

  • 7. 
  • 切り替えの手続き

準備するもの

申し込みでは、主に次の情報を求められます(※19、※20)。

・ いまの契約先の名称(取次や代理の事業者ではなく、小売電気事業者の名称)

・ いまの契約のお客さま番号

・ 供給地点特定番号(電気を使う場所ごとに割り振られた22桁の番号)

・ 切り替えを希望する日

・ 本人確認のための書類

契約先の名称、お客さま番号、供給地点特定番号は、検針票や請求書に載っています。見当たらないときは、いまの契約先に問い合わせれば教えてもらえます(※20)。

申し込みから切り替えまでの流れ

申し込みを受けた切り替え先の事業者は、需要家の同意があれば、いまの契約先との解約手続きも代わりに進められます。原則として、いまの契約先に自分から解約を伝える手間はかかりません(※20)。

資源エネルギー庁は、切り替えにかかる標準的な期間を、スマートメーターへの交換工事が要る場合で2週間程度、要らない場合で4日程度としています(※20)。ただし、これは手続き上の目安で、実際に切り替わる日は個別の契約で決まり、定例の検針日に切り替わるのが基本です。申込日によっては次の検針日に間に合わないこともあります。電力広域的運営推進機関は、これまでの傾向として、申し込んでから切り替え日までに1か月程度かかるとしています(※21)。切り替え日は、申し込むときに切り替え先の事業者に聞いておくことを推奨します。

工事は不要、スマートメーターの交換も原則無料

切り替えても、家や建物のなかの配線を工事する必要はありません(※20)。電気の通り道も、送電線から配電線まで以前と変わりません。

メーターがまだスマートメーターになっていなければ、地域の一般送配電事業者が取り替えます。交換の費用は原則かかりませんが、交換に伴う工事に費用がかかることがあり、作業中は1軒あたり15分ほどの停電を伴う場合があります(※20)。スマートメーターの仕組みや交換の進み方は、スマートメーターの解説記事で扱っています。

  • 8. 
  • 新電力に関するよくある質問

Q. 新電力にすると停電しやすくなりませんか?

Q. 契約中の新電力が撤退したらどうなりますか?

Q. 新電力に切り替えると、電気代は必ず安くなりますか?

Q. 賃貸でも切り替えられますか?

A. 電気の契約を自分の名義で結んでいるなら、賃貸住宅でも契約先を変えられます。マンションやアパートでも、各住戸が電力会社と直接契約していれば同じです(※23)。例外は、管理組合などが建物全体で高圧一括受電をしている集合住宅で、この場合は部屋ごとに電力会社を選べないことがあります。受電の方式は、管理会社や大家に聞けば分かります(「供給エリアを確認する」の節を参照)。

Q. 切り替えに費用はかかりますか?

A. 費用がかかるかどうかは、契約前の説明で分かります。需要家が負担する費用があれば、その内容は、事業者が契約の前に説明しなければならない事項に含まれるためです(※11)。いまの契約に期間の定めがあれば、途中の解約で解約金がかかる場合があります。ただし、スマートメーターへの交換費用は、原則かかりません(「契約期間と解約条件を確認する」の節を参照)。

  • 9. 
  • まとめ

  • 10. 
  • Unisrv 電力CISによる料金メニューの実装と顧客管理

ユニファイド・サービスの「Unisrv 電力CIS」は、電力小売事業者の契約・料金メニュー・需要データなどを一元管理し、30分値を基に需要家の料金計算と精算を行う顧客情報管理クラウドシステムです。固定単価型、市場連動型、燃料費調整や独自の調整項目を持つプランなど、多様な料金メニューの実装・検証・改定と、契約から請求までの顧客管理の元を支えます。

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  • 11. 
  • 参考・引用元

※1 資源エネルギー庁「電力の小売全面自由化って何?」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/what/

※2 e-Gov法令検索「電気事業法」(第2条、第2条の2、第2条の13、第2条の14、第22条の2):https://laws.e-gov.go.jp/law/339AC0000000170

※3 資源エネルギー庁「電力小売全面自由化の進捗状況について」(電力事業環境整備ワーキンググループ 第1回 資料5、2026年7月7日):https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/electric_power_wg/pdf/001_05_00.pdf

※4 資源エネルギー庁「2020年、送配電部門の分社化で電気がさらに変わる」:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/souhaidenbunshaka.html

※5 資源エネルギー庁「料金設定の仕組みとは?」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/pricing/

※6 資源エネルギー庁「電力小売全面自由化で、何が変わったのか?」:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/denryokugaskaikaku/denryokujiyuka.html

※7 資源エネルギー庁「電力小売自由化から1年半、電気料金プランはこんなにユニークに」:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/shindenryoku.html

※8 電力・ガス取引監視等委員会「電力・ガス取引監視等委員会の活動状況(2025年度)」:https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc/pdf/606_03_01.pdf

※9 資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/retailers_list/

※10 電力・ガス取引監視等委員会「託送料金とレベニューキャップ制度」:https://www.egc.meti.go.jp/info/revenue_cap/

※11 経済産業省「電力の小売営業に関する指針」(2026年6月8日最終改定):https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/regulations/kouri20260608.pdf

※12 資源エネルギー庁「電気料金の経過措置に関する検討課題について」(電力・ガス基本政策小委員会 資料):https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/016_04_01.pdf

※13 日本卸電力取引所「取引概要」:https://www.jepx.jp/electricpower/outline/

※14 経済産業省「地域や需要家への安定的な電力サービス実現に向けた市場リスクマネジメントに関する指針」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/regulations/pdf/shijoriskmanagement.pdf

※15 経済産業省「地域や需要家への安定的な電力サービス実現に向けた市場リスクマネジメントに関する参考事例集」(事例1-4、1-8、1-9):https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/regulations/pdf/shijoriskmanagement_b.pdf

※16 資源エネルギー庁「電気料金の経過措置の撤廃を想定した検討課題について」(2018年7月6日):https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/010_06_01.pdf

※17 資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/fuel_cost_adjustment_001/

※18 資源エネルギー庁「賦課金減免制度について(概要資料)」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/kaisei/gen_gaiyou.pdf

※19 電力・ガス取引監視等委員会「別の電力会社に切り替える際に気を付けるポイント」(2024年8月5日):https://www.egc.meti.go.jp/info/liberalization/pdf/20240805.pdf

※20 資源エネルギー庁「電力会社を切り替えるには?」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/step/

※21 電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システムの利用状況について」(2026年7月10日):https://www.occto.or.jp/assets/news/swsys_riyou/20260710swsys_riyoujyoukyou.pdf

※22 電力・ガス取引監視等委員会 第21回制度設計・監視専門会合 資料4「経過措置料金の指定解除に係る競争状況の確認について」(2026年6月19日):https://www.egc.meti.go.jp/activity/emsc_systemsurveillance/pdf/021_04_00.pdf

※23 資源エネルギー庁 電力の小売全面自由化「よくある質問」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/electricity_liberalization/faq/

2026年10月21日

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この記事の監修者

  • 甲斐 博一

    ユニファイド・サービス株式会社 CMO

    グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。

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