「AI-Ready」は、2019年3月に内閣府の統合イノベーション戦略推進会議が決定した「人間中心のAI社会原則」の中で定義された概念です(※1)。社会全体がAIによる便益を最大限に享受するために必要な変革が行われ、AIの恩恵を享受している、または必要な時にただちにAIを導入しその恩恵を得られる状態、つまり「AI活用に対応した社会」を意味します。
この原則では、AI-Readyな社会を実現するために7つの基本原則が示されました。
・ 人間中心の原則 ・ 教育・リテラシーの確保 ・ プライバシー保護 ・ セキュリティの確保 ・ 公正な競争環境 ・ 公平性・説明責任・透明性の確保、 ・ イノベーションの促進
注目すべきは、AI-Readyの対象が「人」「社会システム」「産業構造」「イノベーションシステム」「ガバナンス」の5つの領域に及んでいる点です。個人がAIの長所と短所を理解し、企業がAI活用を前提とした経営戦略を展開し、社会全体がAIの進化に柔軟に対応できる世界を目指しています。つまりAI-Readyとは、特定の技術やツールの導入ではなく、社会全体の「構え」を変えることを求める包括的な概念なのです。
※1 出典:内閣府「人間中心のAI社会原則」(2019年3月29日)
2025年以降、この概念はさらに具体的な政策として実装が進んでいます。
2025年9月にはAI推進法が全面施行され、AIの適切な利活用に関する法的枠組みが整備されました。同年12月には「人工知能基本計画」が閣議決定され、政府は1兆円超のAI投資計画を打ち出す一方で、日本のAI導入が他主要国と比較して遅れている現状を率直に認めています(※2)。
そして2026年3月には、経済産業省と総務省が策定するAI事業者ガイドラインが第1.2版に改定されました(※3)。AIエージェントやフィジカルAIが新たに対象として加わり、企業に求められるAIガバナンスの範囲は一段と広がっています。
こうした政策の加速を受けて、「AI-Ready」は政策文書の中の抽象概念にとどまらず、企業が具体的に取り組むべき実務課題へと変化しています。多くの企業が「自社はAI-Readyな状態にあるか」を問い始めており、組織体制の整備、AI人材の育成、データ基盤の構築といったテーマで活発な議論が行われています。
しかし、こうした議論には、企業が実装していく中で足りない論点があります。次章でまず、現在語られている「AI-Ready化」の全体像を整理したうえで、その足りない視点を明らかにしていきます。
※2 出典:内閣府「人工知能基本計画」(2025年12月23日閣議決定)
※3 出典:経済産業省「AI事業者ガイドライン検討会」
現在、AI-Ready化について語られている内容は、大きく3つの柱に集約されます。
1つ目は、組織体制の整備です。経営層がAIの可能性と限界を理解し、全社的な活用方針を策定すること。AI推進部門の設置や、部門横断的なガバナンス体制の構築がこれにあたります。
2つ目は、AI人材の育成です。データサイエンティストやAIエンジニアといった専門人材の確保はもちろん重要ですが、それ以上に、現場の一人ひとりがデータを理解し活用しようとする組織文化の醸成が求められています。
3つ目は、データ基盤の構築です。社内に散在する非構造化データ(PDF、Excel、メール、マニュアルなど)をAIが活用できる形に整備する取り組みです。近年では、こうしたデータをRAG(検索拡張生成)用に構造化するサービスや、商品情報を自動で抽出・正規化するプラットフォームも登場しており、「データのAI-Ready化」は実務レベルで急速に進んでいます。
本記事では、この3つの柱を「内なるAI-Ready化」と呼びます。社内の体制を整え、データを整備し、AIを活用できる組織に変革すること。これは間違いなく重要であり、多くの企業が今まさに取り組んでいる分野です。
しかし、ここで一つ問いを立ててみたいと思います。
「社内をAI-Ready化した。では、その情報は顧客に届いているのだろうか?」
組織体制を整え、データ基盤を構築し、社内業務にAIを導入した。ところが、顧客が最初に触れる接点─企業のWebサイト─が旧来のまま放置されていたらどうでしょうか。社内のデータがどれだけ整備されていても、それが顧客やパートナーなどの目に触れる場所でAIに正しく読まれなければ、その価値は顧客に届きません。
ここに、もうひとつのAI-Ready化が必要になります。
企業のWebサイトは、長らく「人間が読むもの」として設計されてきました。しかし2025年以降、Webサイトの「訪問者」は人間だけではなくなっています。
Google AI Overviews、ChatGPT、Gemini、Claude、こうした生成AIやAIエージェントが、日常的にWebサイトの情報を読み取り、ユーザーへの回答生成に利用しています。AIはWebサイトを巡回し、テキストの構造や意味を解析し、信頼できる情報源かどうかを判断します。この判断基準を満たしたサイトの情報が、AIの回答に引用されるのです。
この変化が意味するところは明確です。AIに読まれないWebサイトは、顧客に届かないWebサイトになる可能性が高いということです。
実際、ゼロクリック検索(ユーザーが検索結果ページ上で情報を得てしまい、Webサイトを訪問しない行動)は増加の一途をたどっています。AIが検索結果の最上部で回答を生成してしまう環境下では、AIの情報源として選ばれないサイトは、たとえ検索結果に表示されていても、クリックされる機会を失います。
情報が構造化されていないWebサイトは、AIにとって「読みにくい」サイトです。情報がHTMLの中に埋もれ、見出しの階層構造が不明瞭で、Schema.orgなどの構造化データが実装されていなければ、AIはその情報を正しく理解し、引用することが困難になります。また、引用されたとしても、正しく理解されず、いわゆるハルシネーションにつながりやすくなります。結果として、競合サイトに正しい引用を奪われ、自社の公式情報がAI回答の中に登場しないという事態が生じます。
「内なるAI-Ready化」が社内向きの変革であるなら、「外に向けたAI-Ready化」は外向きの変革です。Webサイトの情報をAIが正しく理解できるように整え、外部のAI検索で引用され、サイト内でもAIが顧客の問いに即座に応えられる状態を作ること。この「外に向けた」取り組みこそ、多くの企業でまだ手つかずになったままなのです。

【図版1】真のAI-Ready = 「内」と「外」の両輪対比図
サイトを訪れたユーザーの体験も大きく変わります。
AI-ReadyなWebサイトでは、AIチャットが訪問者の問いに自然な対話形式で回答します。従来のFAQのように「自分で該当する質問を探す」必要はありません。自然言語で質問すれば、構造化されたデータベースの中から最適な回答が生成されます。
サイト内検索も変わります。キーワードの部分一致でページ一覧を返すのではなく、ユーザーの意図を理解し、「答え」そのものを提示する。たとえば「初心者でも簡単に作れる昼食向けレシピ」と入力すれば、調理時間が短く手順が少ないレシピが、理由とともに提案されます。これはもう検索というより「AIへの相談」です。
こうした体験の積み重ねが、リピート訪問と顧客エンゲージメントの向上につながります。「見つける → 満足する → また見つける → また来たくなる」という体験サイクルが生まれ、最終的には購買や新しい相談といった行動へとつながっていくのです。

【図版2】AI-ReadyなWebサイトが生む体験サイクル図
Unisrv AI Ready Web® について詳しくはこちら
内閣府が提唱する「AI-Ready」の考え方を、企業のWebサイト運営に具体的に落とし込んだのが、ユニファイド・サービスが提供する「Unisrv AI Ready Web」です。
Unisrv AI Ready Webは、2つの「顔(FACE)」で構成されています。
一つ目の顔(FACE01)は「AI(つまりコンピューター)に読まれやすい顔」です。これはAIフレンドリーな情報基盤の構築と開示」から生まれます。Web上の情報を整理・正規化し、構造化データとして実装することで、検索エンジンや生成AIが正確にコンテンツを理解できる状態を作ります。ここまで述べてきた通り、ここに社内情報を組み合わせれば、より詳しい情報が提供できます。SEOの改善やリッチリザルト表示の実現に加え、AI OverviewsやChatGPTなど生成AIからの引用にも対応する、GEO時代の情報基盤です。
二つ目の顔(FACE02)は「人間中心のコンテンツと体験の設計」です。AIサイト内検索やAIチャットボットの導入により、訪問者が自然な言葉で問いかけ、最適な答えが即座に返ってくる体験を実現します。ページの紹介ではなく「答え」を返す応答、対話形式で必要な情報に辿り着けるチャット。構造化データが支える情報基盤の上に、人間にとって心地よい体験を設計します。また、そのための土台となるのが「深い顧客理解」です。
Unisrv AI Ready Webは、設計・構築・運用までを一気通貫で提供するサービスです。ソフトバンク様や東京電力エナジーパートナー様をはじめ多くの企業で導入されており、既存のWebサイトを大きく変更せずに段階的にAI対応を進めることも可能です。
AI-Readyの概念を解説する記事は数多くあります。しかし、概念の解説で終わるのではなく、実際にWebサイトのAI-Ready化を設計し、実装し、運用できるサービスがあること。それがUnisrv AI Ready Webの、他にはない特長です。
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AI-Readyの議論は、「社内」と「社外(顧客接点)」の両輪で回して初めて完結します。
多くの企業はいま、組織体制の整備やデータ基盤の構築といった「内なるAI-Ready化」に取り組んでいます。それは紛れもなく正しい一歩です。しかし、その先にある「外に向けたAI-Ready化」=顧客が最初に触れるWebサイトのAI対応、にまで踏み込んでいる企業は、まだ多くありません。
Webサイトは、最も顧客に近いAI-Ready化の実践場です。そして、構造化データの実装やGEO対策、AIチャットの導入といった施策は、比較的短期間で効果が見える分野でもあります。AI-Ready化の「最初の一歩」として、まずWebサイトから着手してみてはいかがでしょうか。
※ Unisrv AI Ready Web は、ユニファイド・サービス株式会社の登録商標(登録第6954891号)です。
2026年4月9日
この記事の監修者

甲斐 博一
ユニファイド・サービス株式会社 CMO
グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。