レポートとセットで語られることが多いのが「ダッシュボード」です。両者の役割は明確に異なります。
・ レポート:詳細データの深掘りが目的。リスト形式でデータを確認したり、細かな集計を行ったりと情報の集計や整理。
・ ダッシュボード:情報をより人に伝わる形に加工することが目的。複数のレポートをグラフ化して一画面に並べ、ひと目で状況を把握するために使用します。ダッシュボードの元データとなるのはレポートです。
ダッシュボードは複数のレポートを「部品」として組み合わせて構成するため、質の高いダッシュボードを作成するには、その土台となるレポートの設計力が欠かせません。レポート作成スキルの向上が、データ活用全体のレベルアップに直結します。
【特徴】
最もシンプルな形式です。Excelのリストのように、グループ化を行わず、すべてのレコード(行)をフラットに表示します。
【適した用途】
・ データのエクスポート:ExcelやCSVで出力して二次加工したい場合
・ メール配信リスト:キャンペーン用の宛先リストを作成する場合
・ システム連携:他システムにインポートするための生データを抽出する場合
【制限】
グラフの作成はできません。また、小計や総計を表示する機能もありません。あくまで「明細リスト」として利用します。
【特徴】
特定の項目(担当者、フェーズ、取引先など)でデータをグループ化し、小計や総計を表示できる形式です。最大3階層までグループ化が可能です。最も利用頻度が高い形式と言えます。
【適した用途】
・ 営業成績の集計:担当者別の商談金額合計や件数。
・ 活動量の把握:月別、週別の活動件数推移。
・ パイプライン管理:フェーズごとの商談金額集計。
【ポイント】
グループ化した集計値を元に、棒グラフや円グラフなどのグラフ作成が可能です。「件数(レコード数)」は自動的にカウントされます。
【特徴】
行(縦軸)と列(横軸)の両方でデータをグループ化し、クロス集計を行う形式です。Excelのピボットテーブルに近いイメージです。
【適した用途】
・ 多軸での分析:「担当者」×「月別」の売上推移
・ 属性分析:「地域」×「製品カテゴリ」別の受注件数
・ 傾向把握:「完了予定月」×「フェーズ」ごとの商談分布
【注意点】
多くの情報を詰め込めますが、軸の設定を事前に設計しないと、視認性が悪く複雑になりがちです。「何と何を掛け合わせて見たいか」を事前に設計しておくことが、見やすいマトリックスレポート作成の鍵となります。
【特徴】
異なるレポートタイプ(データの種類)を、共通の項目(取引先名など)をキーにして横並びに表示できる形式です。最大5つのブロックを追加できます。
【適した用途】
・ 営業プロセスの俯瞰:「商談データ」と「活動データ」を並べて、成約案件に対する活動量を見る
・ 顧客情報の統合:「取引先責任者」と「サポートケース(問い合わせ)」を並べて、顧客ごとの対応状況を見る
【制限】
Lightning Experienceではダッシュボードに結合レポートを追加できますが、グラフ表示には対応しておらず、Lightningテーブルコンポーネントとしての利用に限られます(Salesforce Classicでは追加自体が不可)。また、エクスポート形式も「フォーマット済み」のみとなります。
Salesforceには、あらかじめ用意された「標準レポートタイプ」が多数存在します。
【主な標準レポートタイプ例】
・ 商談
・ 取引先と取引先責任者
・ リード
・ ケース
・ キャンペーンとリード
【選択基準】
分析したい対象が単一のオブジェクト(例:商談のみ)である場合や、Salesforceが標準で定義しているリレーション(例:取引先とそれに紐づく取引先責任者)で十分な場合は、標準レポートタイプを使用します。
メリットは、設定の手間がなくすぐに利用できる点と、将来的なSalesforceのアップデートで項目が追加された際に自動的に反映される点です。
標準レポートタイプでは出したいデータが出せない場合、「カスタムレポートタイプ」を作成する必要があります。
【必要になる典型例】
・ 標準にはないオブジェクトの組み合わせ(例:「商談」とカスタムオブジェクト「見積」を紐づけたい)
・ 「A(親)があり、B(子)がある場合とない場合の両方を出したい」といった結合条件の指定
・ レポートに表示する項目の名称や並び順を整理したい場合
【作成手順概要】
1.[設定] > [レポートタイプ] > [新規カスタムレポートタイプ] を選択
2.主オブジェクトを選択し、名前を付ける
3.関連付けるオブジェクト(B、Cなど)を追加し、リレーション(AにはBが必須か、必須でないか)を設定
4.レイアウトを編集し、表示する項目を選択
5.【重要】ステータスを「リリース済み」に変更する(これを行わないと、レポート作成画面で選択できません)
ここでは詳細なクリック手順ではなく、効率的にレポートを作成するための標準的なフローを7ステップで解説します。
1.目的の明確化
いきなり作り始めるのではなく、「何を知りたいか」を言語化します(例:「今月クローズ予定で、金額が100万円以上の商談を、担当者別に把握したい」)。
2.レポートタイプ選択
分析対象オブジェクトに合った標準、またはカスタムレポートタイプを選択します。
3.検索条件(フィルタ)設定
期間(いつ)、表示(誰の)、項目条件(フェーズ、金額など)を設定し、必要なデータだけに絞り込みます。レポートの精度を左右する最重要ステップです。
4.アウトライン編集(列の選択)
レポートに表示する項目(列)を追加、削除、並べ替えを行い、見やすく整理します。
5.グループ化
サマリー形式やマトリックス形式にする場合、集計の軸となる項目でグループ化を設定します。
6.グラフ追加(任意)
視覚的な把握が必要な場合はグラフを追加します。ダッシュボードで使う場合は、ここでグラフ化しておくとスムーズです。
7.保存・フォルダ登録
分かりやすい名前を付け、適切なフォルダ(公開/非公開/共有フォルダ)に保存します。共有範囲はこのフォルダ単位で決まります。
毎回、レポートの検索条件で日付を手動変更していませんか?「相対日付」を使えば、レポートを開くたびに期間が自動的に更新されます。
【概要】
検索条件の日付項目に、特定の日付(2025/1/1など)ではなく、「相対日付値」を入力します。
【代表的な相対日付値】
・ 今日:TODAY
・ 昨日:YESTERDAY
・ 今週:THIS_WEEK
・ 先月:LAST_MONTH
・ 今年:THIS_YEAR
・ 過去N日間:LAST_N_DAYS:30 (過去30日間)
・ 今後N日間:NEXT_N_DAYS:7(今後7日間)
・ 来月:NEXT_MONTH
【活用例】
「今週の活動レポート」や「先月の受注一覧」など、定期的に確認するレポートに設定しておけば、日付変更の手間がなくなり、常に最新の期間でデータを確認できます。将来日付を使えば「来週のアポイント一覧」なども自動更新で運用可能です。
Salesforceのオブジェクト自体に項目を作らなくても、レポート上だけで一時的に計算を行いたい場合に便利です。
【概要】
レポートの各行(レコード)ごとに数式を使って計算結果を表示します。
【使用例】
・ 期待値の算出:商談金額 * 確度
・ 対応日数の計算:完了日 - 作成日
・ 値引き額の算出:定価 - 販売価格
【制限】
使用できる関数はPREVGROUPVAL、PARENTGROUPVAL、IF、CASE、四則演算など基本的なものに限られ、TEXTやCONTAINSといった文字列関数は利用できません。複雑な計算や他のレポートでも繰り返し使用する指標は、オブジェクトのカスタム数式項目として作成するのが効率的です。
行レベルの数式が「個々のレコード」に対する計算なのに対し、集計項目は「グループごとの合計値や平均値」を使った計算です。
【概要】
グループ化されたセクションごとの集計値を利用して、割合や平均などを算出します。
【使用例】
・ 担当者ごとの受注率:成約件数 / 全商談件数
・ 目標達成率:売上合計 / 目標金額
・ 構成比:特定商品の売上 / 全体の売上
【ポイント】
RowCount(レコード件数)という変数が使えるのが特徴です。これを分母や分子に活用することで、受注率や達成率など、実務で求められる各種KPIを算出できます。
レポートでデータを確認しているときに、「あ、この日付間違ってる」「フェーズ更新し忘れてる」と気づくことはよくあります。レコード詳細画面を開かずに、レポート上で直接修正できるのが「インライン編集」です。
【概要】
レポートの実行画面(プレビュー画面ではない)上で、鉛筆アイコンをクリックして値を直接編集・保存できます。
【有効化方法】
[設定]>[レポートとダッシュボード]>[レポートでのインライン編集を有効化]にチェックを入れることで利用可能になります。
【注意点】
・ 表形式、サマリー形式、マトリックス形式で利用可能です(結合レポートは不可)。
・ 編集できる項目は、ユーザーのプロファイル権限や項目の設定(参照のみなど)に依存します。
レポートデータをExcelなどで二次利用する際のエクスポート機能にも種類があります。
【エクスポート形式】
1.フォーマット済みレポート(.xlsx):レポートの見かけ(ヘッダー、グループ、小計など)を維持したままExcelに出力します。そのまま会議資料として印刷するのに適しています。
2.詳細のみ(.xls / .csv):ヘッダーや小計を除き、データ行のみをフラットに出力します。データ分析や他システムへのインポートに適しています。
【注意点】
・ 行数制限:「詳細のみ」のエクスポートでは最大256,000行まで出力可能ですが、「フォーマット済み」では最大2,000行、レポート画面の表示も最大2,000行という制限があります。大量データを扱う場合は、フィルタで期間や条件を分割するか、データローダーやレポートのスケジュール実行(Data Export)の活用が有効です。
・ 結合レポート:「フォーマット済み」でのみエクスポート可能です。
営業部門では、「今の数字」と「将来の数字」の両方を可視化することが重要です。
・ パイプラインレポート(サマリー形式)
・ レポートタイプ:商談
・ 目的:今月・来月の着地見込みを把握する
・ 設定:完了予定月ごとにグループ化し、フェーズ別に商談金額を集計
・ クローズ予定日が過ぎた商談一覧(表形式)
・ レポートタイプ:商談
・ 目的:放置されている案件(ヨミの精度を下げる要因)の洗い出し
・ 設定:完了予定日 < TODAY、かつフェーズが完了系以外の商談を抽出
・ 担当者別活動量サマリー(マトリックス形式)
・ レポートタイプ:活動(行動 and ToDo)
・ 目的:行動量を管理し、不調の原因を早期発見
・ 設定:行を担当者、列を活動日(週次)にし、活動件数をクロス集計
マーケティング部門では、施策の投資対効果(ROI)を定量的に評価するレポートが求められます。
・ キャンペーンROIレポート(サマリー形式)
・ レポートタイプ:商談キャンペーン(または「キャンペーン、商談」カスタム)
・ 目的:どのキャンペーンが最も効率よく商談を生んだかの把握
・ 設定:キャンペーンごとに、獲得リード数、商談化件数、商談金額を集計
・ リードソース別・商談転換率(マトリックス形式)
・ レポートタイプ:リード(取引開始済み含む)
・ 目的:質の高いリードがどこから生まれているかの分析
・ 設定:リードソース×月別で、商談化率(集計項目を使用)を表示
・ パイプライン生成予実(サマリー形式)
・ レポートタイプ:商談(主キャンペーンソース項目を利用)
・ 目的:マーケティングが生み出したパイプライン総額が目標に届いているかの確認
・ 設定:キャンペーン種別ごとにパイプライン生成額に関する目標値と実績の比較
サポート部門では、対応品質の維持と業務効率化のためのボトルネック特定に活用します。
・ カテゴリ別問い合わせ件数(サマリー形式)
・ レポートタイプ:ケース
・ 目的:製品の不具合や要望の傾向を掴んだうえで、開発へフィードバック
・ 設定:ケースの「種類」や「発生源」ごとの件数集計
・ 担当者別・平均解決時間(サマリー形式+集計項目)
・ レポートタイプ:ケース
・ 目的:パフォーマンスのばらつきを把握
・ 設定:担当者ごとに、平均解決時間(完了日時 − 作成日時)を集計項目で算出
・ SLA警告レポート(表形式)
・ レポートタイプ:ケース
・ 目的:対応期限が迫っている、または超過したケースを漏らさず対応
・ 設定:ステータスが「未完了」かつ、作成日がLAST_N_DAYS:3以前のケースを抽出、条件付き書式で期限超過を視覚的に強調すると効果的
A. 以下の3点を確認してください。
1.検索条件(フィルタ):「作成日」や「完了予定日」の範囲が狭すぎる場合があります。一度「すべての時間」に広げて確認してみてください。また、「私の商談」など所有者フィルタが意図せず適用されているケースも多く見られます。
2.レポートタイプ:そもそも選択したレポートタイプに、見たいデータが含まれていない可能性があります(例:リードレポートで商談は見れません)。
3.権限:アクセス権がないレコードはレポートにも表示されません。共有設定やロール階層をシステム管理者と確認することで解決するケースが多いです。
A. レポート形式が「表形式」になっている可能性があります。表形式ではグラフを作成できないため、任意の項目でグループ化を行い、サマリー形式またはマトリックス形式に変更することで解決します。
A. エクスポートボタンが表示されない場合は、プロファイル権限で「レポートのエクスポート」が無効になっている可能性があります。データが途中で切れている場合は、「フォーマット済み」の2,000行制限に該当していることが考えられます。「詳細のみ」形式(最大256,000行)を選択するか、定期的な大量データ抽出にはデータローダーまたはレポートのスケジュール実行が有効です。
A. Salesforceではレポート単体ではなく「フォルダ」単位で共有範囲を制御します。レポートを保存するフォルダの共有設定で、閲覧させたいユーザー、ロール、公開グループを指定します。「公開レポート」フォルダは全ユーザーに公開されるため、限定共有には専用フォルダの作成が必要です。
ここまで解説したように、Salesforceのレポート機能は多彩な分析に対応できる一方、レポートタイプの選定やフィルタ設計、集計項目の設定など、一定の習熟が求められます。「もっと手軽に分析したい」「定型レポート以外の切り口でもすぐにデータを見たい」といった声は、現場でよく聞かれる課題です。
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・ AIによるインサイト発見
人間が気づきにくいデータの異常値やトレンドの変化をAIが検知し、能動的に提案します。「この商品の解約率が上がっています」といった気づきが、次のアクションを加速させます。
・ 既存のSalesforceデータをそのまま活用
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2025年12月26日
この記事の監修者

甲斐 博一
ユニファイド・サービス株式会社 CMO
グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。