Salesforce Data Cloud(Data 360)とは?機能・料金とデータ統合の仕組み

Salesforce Data Cloudは、部門やシステムに分かれて保存されたデータを集め、同じ顧客の分を1つにまとめる製品です。名称は2025年10月に「Data 360」へ変わりました(※1)。まとめたデータは、Sales CloudなどのSalesforceのアプリのほか、AIエージェントの「Agentforce」でも使えます。

Snowflakeのような外部のデータ基盤にある情報も、ゼロコピー連携で複製せずに参照できます(※2)。料金は「Flex Credit」「Profiles」「Enterprise Profiles」の3つの体系から選び(※3)、対象の契約を持つSalesforceの利用者は無料の枠から始められます。


この記事で分かること

・Data 360(旧Data Cloud)が何をする製品で、Sales Cloudなどとどう役割を分けているか

・ばらばらのデータが顧客ごとにまとまるまでの流れと、ほかのデータ基盤との併用の仕方

・統合したデータの使い道と、AIエージェント(Agentforce)への渡し方

・料金の仕組みと無料で始められる範囲、使い始める前に社内で決めておくこと

 

※製品名と料金の内容は、2026年10月時点のものです。

  • 1. 
  • Data Cloud(Data 360)とは:顧客データを1つにまとめる基盤

Data 360は、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)と呼ばれる種類の製品で、企業が顧客のデータを集めてためておくための仕組みです。Salesforceは、集めたデータを顧客とのやり取りに生かすところまでをData 360の役目としています(※1)。CDPの一般的な説明は、記事「CRMとは?MA・SFAとの違い、機能やメリットも解説」のよくある質問「CRMとCDPはどう違いますか」をご覧ください。

部門やシステムごとに分かれた顧客データをまとめる基盤

同じ顧客でも、メールの反応はマーケティング部門、問い合わせの履歴はカスタマーサービス部門、イベントへの参加は営業部門、購入の履歴はECサイトの担当者が、それぞれのシステムで記録しています(※1)。

Data 360は、こうしたデータを1か所に集め、同じ顧客の分をひとまとめにします。部門が違っても、担当者は同じ最新のデータを見て顧客に対応できます。Salesforceはこれを「Customer 360」と呼んでいます(※4)。同じ顧客かどうかの見分け方は、「ID解決で、同じ顧客のデータを1つのプロファイルにまとめる」で取り上げます。

Data CloudからData 360への名称の変更

Salesforceは2025年10月14日、「Data Cloud」の名前を「Data 360」に改めました。変わったのは名前だけで、機能や内容はそのままです(※1)。この製品は、これまでにも表1のように名前を変えてきました。


表1 Data 360の名前の移り変わり

時期

名称

主な変更点

2022年まで

Salesforce CDP、Customer Data Platform

Data 360のもとになったCDPの製品名

2022年9月

Salesforce Genie

リアルタイムのデータ基盤として発表

2023年

Data Cloud

Customer Data Platformなどの名前をData Cloudにそろえる

2025年10月

Data 360

名前だけを変更し、機能はそのまま

出典:※1、※5をもとに作成


設定画面や説明資料には、Data Cloudの名前が残っていることがあります(※1)。いまの契約の扱いは、よくある質問「Data Cloudを契約中の場合、契約はどうなりますか」で答えています。ほかの製品の名称変更は、記事「SalesforceのAI「Einstein」とは?主要機能や価格、活用事例を解説」の名称変更マップをご覧ください。

Sales Cloud・Service Cloud・Marketing Cloudとの役割の違い

Salesforceには、営業向けのSales Cloud、問い合わせ対応向けのService Cloud(Agentforce Service)、マーケティング向けのMarketing Cloud(Agentforce Marketing)など、部門ごとのアプリがあります。

Data 360は、これらを置き換えるものではなく、統合した顧客データをそれぞれのアプリに届ける土台です。ECサイトや基幹システム(ERP)のデータも、Salesforce上の取引先や商談と結び付けて使えます(※4)。


表2 製品ごとに主に扱うデータ

製品

主に扱うデータ

Sales Cloud

見込み客(リード)、進行中の商談、取引先といった営業のデータ

Service Cloud

寄せられた問い合わせと、その後の対応の履歴

Marketing Cloud

メールなどの配信と、開封やクリックといった反応の履歴

Data 360

3つのアプリのデータに、Salesforceの外にあるシステムのデータも加え、顧客ごとにまとめたもの

出典:※1、※4をもとに作成


Salesforceの製品の全体像と費用のかかり方は、記事「SalesforceのCRMとは?「導入しただけ」で終わらせない活用の本質を解説」にまとめています。

  • 2. 
  • Data 360がデータを統合する仕組み

Data 360は、データを「つなぐ」「形式をそろえる」「同じ顧客をまとめる」の順に整え、営業や配信、AIで使える状態にします。データの利用や同意に関するルールは、接続したすべてのデータに自動で適用されます(※4)。

【図1】Data 360でデータが使える状態になるまでの流れ

Data 360がデータを取り込み、形式をそろえ、同じ顧客をまとめて、営業・配信・AIで使える状態にする流れを示す図.png

出典:※4をもとに作成

コネクターで社内外のデータを取り込む

取り込み口となるコネクターは200種類以上あり、Salesforceの製品のほか、Amazon S3やGoogle Cloud Storageといったクラウドストレージともつなげます。コネクターがないシステムとは、SDKやAPIで接続します(※4)。

表の形の構造化データだけでなく、PDFの資料、メール、画像、通話の文字起こしといった非構造化データも取り込めます(※4)。AIでの使い方は、(ページ内リンク:「社内の文書やナレッジもAIの根拠として使えるようにする」へ)で説明しています。

コネクターでの取り込み(データストリーム)では、データの複製をData 360の中に保存します。定期的なバッチ処理で取り込む場合は、元のデータとの間に時間差が出ます(※2)。

ゼロコピー連携で、データを複製せずにやり取りする

ゼロコピー連携は、データをSnowflake、Google BigQuery、Databricks、Amazon Redshiftなどのデータ基盤に置いたまま、Data 360から直接参照する方式です(※2)。コピーしないため、ほぼリアルタイムで最新のデータを使え、同じデータを二重に持たずに済みます。


表3 取り込みとゼロコピー連携の比較(2026年10月時点)

項目

取り込み(データストリーム)

ゼロコピー連携

データの置き場所

Data 360の中にコピーして保存する

元のデータ基盤に置いたまま参照する

データの鮮度

バッチ処理では、元のデータとの間に時間差が出やすい

ほぼリアルタイムで最新のデータを使える

主な接続先

Salesforceの製品、クラウドストレージ、Webサイトやアプリ、MuleSoft経由の外部サービスなど

Snowflakeなどの主要なデータ基盤

費用

バッチでの取り込みは無料。ストリーミングでの取り込みや、データの整備・統合、セグメントの作成などは課金の対象

接続は無料。データの参照(クエリ)や共有、整備・統合、セグメントの作成などは課金の対象

向いている場合

データ基盤がなく、Data 360に集めて使う

既存のデータ基盤を生かしたい

出典:※2、※3をもとに作成

統合データモデルで、データの形式をそろえる

同じ内容のデータでも、あるシステムでは「電話番号」、別のシステムでは「TEL」というように、項目の名前や形式はシステムごとに違います。Data 360では、各システムの項目を標準のデータモデル「Customer 360 データモデル」に当てはめ(マッピング)、同じ形式で扱えるようにします。値を直したり形式を変えたりする処理も設定できます(※4)。

標準のデータモデルに沿ってデータが入っていることを前提にした機能もあるため、まず標準のモデルに合わせると、機能を生かしやすくなります(※4)。

ID解決で、同じ顧客のデータを1つのプロファイルにまとめる

同じ顧客が、CRM、Webサイト、アプリで別々のIDで管理されていたり、見込み客(リード)と取引先責任者の両方に登録されていたりすることがあります。こうしたデータを同一の人物や企業として結び付けるのがID解決で、顧客ごとに1つにまとまったデータを「統合プロファイル」と呼びます(※6)。

どの条件で同じ顧客とみなすか(一致ルール)と、値が食い違ったときにどの値を使うか(調整ルール)は、自社で決めて設定します。調整ルールでは、最後に更新された値や、特定のシステムの値を優先する、といった決め方ができます(※6)。

Flex Creditで支払う場合、ID解決はクレジットの消費が大きい処理です(※3、※6)。対象のデータは必要なものに絞ります。料金の考え方は、「クレジットとプロファイルで決まる料金の仕組み」で説明しています。

ID解決の成否は、データを整える準備で決まる

ID解決で苦労するのは、ルールの設定ではなく、その前のデータ側の準備です。同じ顧客を突き合わせるには、メールアドレス、電話番号、法人名といった手がかりの項目が、システムをまたいで同じ形でそろっている必要があります。ところが実際のデータは、全角と半角、ハイフンの有無、法人格の表記、担当者ごとの入力の癖がばらばらで、そのままでは一致ルールが成り立ちません。

この整え方は、統合していくデータの置き場所で変わります。コネクターで取り込んだデータは、Data 360の中で変換をかけ、形をそろえてからID解決にかけられます。一方、ゼロコピーで参照するデータは、元のデータ基盤にある形のまま読む方式です。公式の対応表でも、参照したデータをID解決の対象にはできる一方で、参照先の項目名や型の変更には対応しないとされています(※7)。参照先の項目名や入力の形式を、Data 360の側でそろえ続けるのは現実的ではありません。支援の現場では、ID解決の手がかりになる項目はコネクターで取り込んでData 360の中で整え、購買履歴や行動ログのような付随する情報をゼロコピーで参照する、という分け方をお勧めしていますが、この精度をどれだけ高められるかが勝負になります。

このデータ統合とID解決は、このあとのデータ活用の土台になる重要な工程です。データソースが増えるほど工数はかかりますが、ここをどの精度でやりきるかが、AIを生かすための最初のハードルになります。何よりも先に、かつ十分な時間とリソースを割いて取り組むことをお勧めします。

同意やデータの利用ルールをまとめて管理する

データの使い方の方針、顧客の同意の内容、法令などを守るためのルールを設定しておくと、つないだデータに自動で適用されます。扱いに注意が要るデータをAIが見つけて分類し、使い方を制限することもできます(※4)。どの顧客のデータを使ってよいか、顧客がどの連絡手段を望んでいるかも把握しやすくなります(※1)。

ただし、適用されるのは自社で設定したルールです。どの同意があれば、どのデータを何に使ってよいかは、設定に入る前に社内で決めておきます。

  • 3. 
  • ほかのデータ基盤やCDPとの関係:置き換えではなく併用になる

SnowflakeやDatabricksとの関係:データ基盤はそのまま、Data 360が使う側

Data 360とSnowflakeやDatabricksなどのデータ基盤は、ゼロコピー連携でつながります。データは元の基盤から動かさず、Data 360の側から読み取ります。反対向きの連携もあり、Data 360で統合した顧客プロファイルやセグメントを、Snowflake、Databricks、Google BigQueryなどの側でも使えます(※4)。

データ基盤は会社全体のデータをためて分析する場所で、Data 360はそのうち顧客に関するデータを、Salesforceの業務やAIで使いやすい形に整えます。いまの基盤を作り替えずに加えられます。

Treasure Dataなど他社CDPとの関係:重なる部分と、分かれる部分

Treasure Dataなどの他社CDPにも、データの収集、ID解決(Treasure Dataでは「ID統合」)、セグメントの作成の機能があります(※8)。違いが出るのは、統合したデータの主な渡し先です。Treasure Dataは、Salesforceに限らず多くの配信先やツールと連携できます(※8)。Data 360は、統合したデータをSalesforceの画面やAgentforceで使うことを主な目的にしています(※4)。

併用の仕方は2通りです。1つは、全社の顧客データを他社CDPで統合し、Salesforceで必要な分を書き出してData 360に取り込むやり方で、Treasure Dataには処理結果をSalesforceのオブジェクトへ書き込む機能があります(※8)。もう1つは、Data 360でまとめた顧客データを、有効化の機能で外部のシステムへ送るやり方です(※9)。他社CDPを送り先にできるかは製品ごとに確かめます。起点は、全社の顧客データの統合をすでに他社CDPが担っているかと、AIをどこで動かすかで決めます。

併用するときに決めておくこと

併用するときは、顧客IDの「正」をどちらに置くか、同意情報をどちらで管理するか、同じ処理を両方で動かして費用が二重にならないか、の3点を先に決めます。Flex Creditでは、ID解決やセグメントの作成は使った分だけ課金されるため(※3)、他社CDPで済んでいる処理をData 360でも動かすと、その分の費用がかかります。使い道とデータの範囲、管理する体制の決め方は、「Data 360の導入前に決めておくこと」で説明しています。


表4 3つの基盤の役割の違い

項目

データ基盤(Snowflake、Databricksなど)

他社CDP(Treasure Dataなど)

Data 360

主な役割

全社のデータを保管し、分析する

全社の顧客データを集め、さまざまな配信先やツールで使う

顧客データを中心に、Salesforceの業務とAIで使える形に整える

データを置く場所

自社のデータ基盤

他社CDPの環境(製品によってはデータ基盤との連携もある)

Data 360の内部(ゼロコピー連携の場合は元のデータ基盤)

主に使う画面

分析ツールやデータ基盤の管理画面

他社CDPの管理画面

Sales CloudやService CloudなどSalesforceの画面

AIとの関係

分析やAIモデルの開発に使うデータを置く。Agentforceで使う場合は、ゼロコピー連携でData 360から参照する

AIの機能は製品ごとに異なる。Agentforceで使う分は、Salesforceへ書き出してData 360に取り込む

Agentforceが回答や作業の根拠にする顧客データと社内の文書を整え、直接渡す

Data 360との接続方法

ゼロコピー連携(双方向)

Salesforceのオブジェクトを介した連携など

-

出典:※4、※10、※8をもとに作成

  • 4. 
  • 統合したデータを使うData 360の機能

統合したデータは、Data 360の中で分析するだけでなく、配信や営業・カスタマーサービスの業務に使え、業務を自動で動かすきっかけにもなります(※4)。

条件を指定して顧客のセグメントを作り、配信先に渡す

統合した属性や計算した指標をもとに、購入の履歴やWebでの行動などの条件を画面上で指定して、顧客のグループ(セグメント)を作れます(※4、※9)。セグメントは決めたスケジュールで公開され、Flex Creditでは作成や更新のたびにクレジットが減るため、Salesforceは公開の頻度を必要な範囲にとどめるよう勧めています(※3、※9)。

セグメントは、Marketing Cloudのような配信の仕組みや、GoogleやMetaの広告に渡せます(※4)。セグメントを外部のシステムへ送るこの操作を「有効化」と呼びます(※9)。

顧客ごとの指標を計算する(計算済みインサイト)

顧客ごとに、購入の傾向、顧客生涯価値(LTV)、関わりの深さを表すエンゲージメントスコアといった指標を計算できます。指標は、標準で用意された画面(インサイトビルダー)などで定義します(※4)。

予測AIのモデルで、顧客が次にとる行動や求めているものを予測することもでき、自社で開発したモデルも使えます(※4)。LTVの考え方と計算方法は、記事「LTVとは?マーケティングで重要な理由、計算式を解説」をご覧ください。

データの変化をきっかけに業務を自動で動かす

データが更新されたとき、計算した指標の値が変わったとき、刻々と届く行動データ(ストリーミングイベント)を処理したときに、Salesforceの自動処理(Flow)を始められます(※4)。

たとえば営業では、購入の履歴やWebでの行動をもとに次の対応を決める処理を組めます。カスタマーサービスでは、製品の利用状況などを担当者に見せ、対応に生かせます(※4)。

設定の流れ(Data 360の有効化からセグメント公開まで)

「有効化」という言葉は、Data 360を使い始めるための設定と、作ったセグメントを配信先に渡す操作の両方に使われます。ここでは前者を5つのステップで示します。後者は「条件を指定して顧客のセグメントを作り、配信先に渡す」で説明しています。


(1)利用開始と権限の割り当て:有償のライセンスが付与された組織では、通常は自動で使える状態になります。無料の枠は、管理者の申し込みから始まります(※11)。設定する担当者には管理用の権限を割り当て、クレジットの使いすぎに気づけるようアラートも設定しておきます(※12)。

(2)データの接続:コネクターでデータソースとつなぎ、取り込むデータと間隔を決めて、データストリームを作ります(※12)。

(3)マッピング:取り込んだデータの項目を、標準のデータモデルか、自社で用意したカスタムのデータモデルの項目に結び付けます(※12)。

(4)ID解決:一致ルールと調整ルールを決めて実行し、統合プロファイルを作ります(※6)。

(5)セグメントの作成と公開:統合したデータから条件を指定してセグメントを作り、公開します(※9)。


Salesforceは、設定の前に、何の目的でどのデータを使うのかをはっきりさせておくよう勧めています(※12)。使い道とデータの範囲は、「Data 360の導入前に決めておくこと」に沿って先に固めます。

  • 5. 
  • AgentforceとData 360の関係

Agentforce 360は、人とAIエージェントが同じシステムの中で協力して仕事を進めるための、Salesforceの基盤です。Data 360はその構成要素の1つで、AIエージェントが仕事に使うデータの文脈を提供します(※4)。


【図2】AgentforceとData 360の関係

Data 360が統合した顧客データと社内の文書を、AgentforceのAIエージェントが回答や作業の根拠として使う関係を示す図.png

出典:※4、※10をもとに作成

AIエージェントが回答や作業の根拠にする顧客データを渡す

Agentforceが正確に動くには、相手の顧客が誰で、何を買い、どんな問い合わせをしてきたかといった文脈が欠かせません。その文脈を、統合した顧客データから取り出してAgentforceに届けるのがData 360です(※4)。

Agentforceの機能と動く仕組みは、記事「Agentforceとは?機能・仕組みと活用シナリオを解説」で解説しています。AIに必要なデータの条件は、記事「SalesforceのAI「Einstein」とは?主要機能や価格、活用事例を解説」で取り上げています。

社内の文書やナレッジもAIの根拠として使えるようにする

PDFの資料や通話の文字起こしなどの非構造化データも、Data 360で処理して保存すれば、AIが検索できるようになります。AIが答える前に、質問に関係する情報を社内のデータから探し、その情報を根拠にして回答を組み立てる仕組みを、RAG(検索拡張生成)といいます。AIが知らない自社の製品や規程について答えるには、この仕組みが欠かせません。Data 360は、データを検索できる状態にする「検索インデックス」と、そこから関係する情報を探す「レトリーバー(検索役)」の2つで、この仕組みを支えます(※10)。

検索インデックスは、文書を検索しやすい形に作り替えたものです。作るときには、まず文書を意味のまとまりごとの小さな単位(チャンク)に分け、それぞれを数値の列(ベクトル)に変換します。こうしておくと、質問の文と意味が近いチャンクを探せるようになります(※13)。検索の方式は、意味の近さで探す「ベクトル検索」と、意味の近さとキーワードの一致の両方を使う「ハイブリッド検索」の2つから選びます。どちらの方式でも、作るときに強化の設定を有効にすると、各チャンクにキーワード、エンティティ(人名や製品名などの固有の名前)、トピック、想定される質問といったメタデータを、LLMが自動で付け加えます。この「強化検索インデックス」を使うと、質問の言い回しが文書と違っていても、関係するチャンクを見つけやすくなります(※14)。

検索インデックスに入れる情報は、絞り込んでおくことが勧められています。定型の案内文や記事番号のように本文と関係のない項目まで入れると、意味の近さの判定がぶれて、関係のないチャンクが混ざりやすくなるためです(※13)。

レトリーバーは、質問を受け取ったときに、検索インデックスから関係するチャンクを取り出す役です。取り出したチャンクは、AIへの指示文(プロンプト)に添えられ、AIはそれを根拠に回答を作ります。レトリーバーでは、ナレッジ記事の製品カテゴリや地域のように、元データの構造化された項目を条件にして、検索の対象をあらかじめ絞り込めます(※15)。たとえば「法人向け製品の問い合わせには、法人向けのナレッジ記事だけを探す」といった絞り込みです。

つまり、回答の精度を左右するのは、検索インデックスの作り方と、レトリーバーでの絞り込みの2つです。どちらも、元データの側で、カテゴリ、製品、対象顧客といった分類の情報が項目として整っていてはじめて生きます。社内の文書をAIの根拠にするなら、文書を集めることと並行して、こうした項目を整えておくことが欠かせません。

  • 6. 
  • Data 360の料金の考え方

Data 360の料金は、処理の量で払うか、統合するプロファイルの数で払うかで、3つの体系に分かれます。料金はこれまでにも改定されており、2025年9月には、Sales CloudやService CloudなどのSalesforceの製品から構造化データを取り込む処理が無料になりました(※16)。2026年10月時点の価格ページでは、バッチでの取り込みとゼロコピー連携での接続が無料で、課金はデータを使う処理にかかります(※3)。実際に払う額は契約の中身と使い方で違うため、金額はSalesforceの価格ページで確認してください。

クレジットとプロファイルで決まる料金の仕組み

Data 360の料金には、「Flex Credit」「Profiles」「Enterprise Profiles」の3つの体系があります。Flex Creditは処理した量に応じてクレジットが減る方式で、ProfilesとEnterprise Profilesは統合プロファイルの件数をもとに料金が決まる方式です(※3)。Sales Cloudのように、利用するユーザーの数で決まるライセンスとは、考え方が違います。

Flex Creditはどの処理にも充てられ、Agentforceとの間で融通もできます。支払い方は、事前の一括購入、従量払い、利用額の事前約束などから選べます(※3)。

Flex Creditでクレジットが減るのは、非構造化データの処理、データの準備と統合、セグメントの作成と有効化、データの照会(クエリ)と共有、ストリーミングやリアルタイムの処理です(※3)。このほかに、データストレージや追加の機能(プレミアムアドオン)の費用がかかります(※4)。取り込み方による違いは表3のとおりです。使った量はDigital Walletで確かめられ、アラートも設定できます(※12)。


表5 Data 360の3つの料金体系(2026年10月時点)

項目

Flex Credit

Profiles

Enterprise Profiles

何に対して払うか

使った処理の量(クレジット)

統合するプロファイルの数

統合するプロファイルの数

料金に含まれる処理と上限

定額で含まれる処理はない。バッチでの取り込みとゼロコピー連携での接続を除き、使った処理の分だけクレジットを消費する

プロファイルを作る処理。計算済みインサイトと変換は各25まで、セグメントは100まで。プロファイル1件あたり1 Flex Creditが付く

Profilesの内容を含み、計算済みインサイトと変換は各100、セグメントは500まで。プロファイル1件につき2 Flex Creditが付き、データマスキングと広告オーディエンスのアドオンも付属

向いている使い方

使い方に合わせて柔軟に広げたい

CDPとしての使い方から始めたい

Profilesより多くの処理を料金に含めたい

出典:※3をもとに作成


おおよその費用は、公式の料金計算ツールで試算できます(※3)。エディションごとの違いとFlex Creditについては、記事「Salesforceエディション比較|ライセンスの選び方と失敗しない選定基準」で解説しています。

Salesforceの利用者が無料で始められる範囲

Enterprise Editionなど対象のエディションでSalesforceを契約し、Data 360やCustomer Data Platform(CDP)のライセンスをまだ持っていない組織は、「Data 360 Provisioning」という無料の枠でData 360を始められます。申し込みは管理者が「Your Account」の画面から行い、対象かどうかもそこで確かめられます(※11)。機能は有償のData 360 Starterと同じで、使える量が少なく設定されています(※11)。

2026年10月時点の公式表記では、無料の枠で使えるのは年間25万クレジットと1TBのデータストレージで、Unlimited Plus Edition(現在のAgentforce 1 Edition)では年間250万クレジットです(※11)。対象のエディションは公式の資料によって書き方が異なるため、申し込みの画面で確かめてください。

これとは別に、対象の契約に追加料金なしで付く機能のセット「Salesforce Foundations」には、セグメントの作成と有効化に充てられる1万クレジットが入っています(※17)。対象の契約や上限の量は見直されることもあるため、申し込む前に公式サイトで最新の情報を確認してください。

  • 7. 
  • Data 360の導入事例

国内でも、事業をまたいで顧客データをつないだ事例や、AIエージェントが参照するデータを集めた事例があります(※18、※19)。2社に共通するのは、最初にデータを使える状態に整えたことです。

導入事例 弁護士ドットコム:4つの事業に分かれていた顧客データを統合

弁護士ドットコムは、法律相談と弁護士検索のポータル『弁護士ドットコム』や電子契約サービス『クラウドサイン』を運営する、東京都港区のインターネットサービス企業です。同社は、『弁護士ドットコム』『税理士ドットコム』『クラウドサイン』『BUSINESS LAWYERS』の4事業を別々の組織で運営し、業務の流れやシステム、顧客データも事業ごとに管理していました(※18)。

同社は、業務やシステムを一度にまとめず、4事業の取引先、取引先責任者、商談などのデータの一部をData 360に集めて統合しました。約10か月でリリースし、全社員が事業を横断して顧客の情報を使えるようになっています。営業の担当者は、ほかの事業の顧客情報や過去の商談の履歴も確認できるようになり、事業をまたいだ提案の機会を見つけやすくなりました(※18)。

導入事例 フェイスネットワーク:AIエージェントが参照するデータを一元化

フェイスネットワークは、東京の城南3区(世田谷区、目黒区、渋谷区)を中心に、新築の一棟RCマンションの開発と販売を手がける、東京都渋谷区の不動産デベロッパーです。同社は、Sales CloudとService Cloudにたまった業務データを生かすため、文書や図面も扱えるData 360を導入しました。土地の情報、法令のデータ、設計図面、過去の案件の知見を集め、Agentforceがこれらをまたいで参照しています。物件情報の入力はAgentforceが行うようになり、1件あたり約5分から約30秒へ、約90%短くなりました(※19)。

同社の担当者によると、Agentforceの導入で最初に手を付けたのは、データを信頼して使える状態にすることでした(※19)。このように、AIエージェントの導入では、データの整備が最初の仕事になります。AIエージェントの使い方は、記事「Agentforceとは?機能・仕組みと活用シナリオを解説」をご覧ください。

  • 8. 
  • Data 360の導入前に決めておくこと

Salesforceが勧めているのは、技術的な設定の前に事業の目標を定め、目標に沿った使い道(ユースケース)を選ぶ進め方です。目標から逆算しないまま機能の話を進めると、設定の手戻りが増えやすくなります(※20)。

たとえば「まずは全部のデータをData 360に集めよう」と始めると、どのデータをどこまで整えればよいかの基準がないまま、またID解決の方針もないまま、ただ取り込む範囲だけが広がっていきます。こうして取り込んだデータは、いざ使おうという段階でAIエージェントの精度が上がらず、断念してしまうケースも多く見受けられます。データの整備は避けては通れない作業で、それなりの労力やコストもかかります。だからこそ、一部門の作業ではなく会社ごととしてとらえ、経営陣を巻き込みながら進めることが肝要です。

統合したデータを何に使うかを決める

はじめに、現状の困りごとと導入後に目指す姿を書き出します。使い道は部門によってまったく違いますが、最初から部門間の連携を考えるより、モデルとなる一部門に絞って実装し、そこから段階的に部門を広げ、部門連携を実現させ、全社へと展開していくことを推奨します。たとえば課題が「顧客ごとにデータをまとめて見られない」なら、目標は「その顧客に関係のある案内を、その顧客にとって適切な時期に届ける」のように置き、そこに近づく使い道から、効果と実現しやすさで最初の1つを選びます(※20)。

また、2年以内に製品を購入した顧客のセグメントを作り、Marketing Cloudへ公開するといった使い道からも始められます(※20)。

使い道に必要なデータの範囲を決める

次に、使い道ごとに必要なデータと、それがいまどのシステムに入っているかを一覧にし、データを何に、どこで使うかも決めます(※20)。

あわせて、取り込むデータを絞るか、誤りや重複を直す作業(クレンジング)が要るか、ID解決が要るかも確かめます(※20)。データの質の考え方は、記事「SalesforceのAI「Einstein」とは?主要機能や価格、活用事例を解説」をご覧ください。

データを管理する部門と担当を決める

データを使う側のマーケティングやCRMの担当者は、目的を設定することにより、必要なデータを挙げられます。一方、各システムでの管理のされ方を知っているのは、情報システムの管理者やデータの専門家です。両者が一緒に検討する体制をつくり、部門間の調整も整理しておきます(※20)。

決めた使い道と必要なデータは、Salesforceのデータワークブックなどを使って文書にまとめます。運用後にデータの問題が起きても、原因の多くは元のシステムにあり、文書があればたどりやすくなります(※20)。

使い道やデータの範囲の決め方に迷ったときは、ユニファイド・サービスの無料相談もご利用ください。


  • 9. 
  • Data 360に関するよくある質問

Q. データウェアハウスやデータレイクとは何が違いますか?

A. 置き換えるのではなく、ゼロコピー連携でつないで併用できます。ほかのデータ基盤はデータの管理や整理を主な役目としますが、Data 360は、営業やサービス、マーケティングの担当者がSalesforceの画面上でデータを見てすぐ動けることを目指して作られています(※4)。

Q. Data Cloudを契約中の場合、契約はどうなりますか?

A. いまの契約期間中は、Data Cloudとして結んだ条件と価格が変わらず、契約した機能もそのまま使えます。契約を更新する際にData 360の新しい構成へ切り替えたいときは、Salesforceの営業担当者に相談してください(※4)。

Q. Data 360を使うのにプログラミングの知識は必要ですか?

A. 必ずしも必要ではありません。用意されたコネクターや、Flow、Agentforceといったローコードのツールで、情報システム部門以外の担当者もデータを使えます(※4)。独自のシステムはSDKやAPIでつなぐこともあり、データの設計には元のシステムに詳しい担当者が欠かせません(※20)。

Q. 複数のSalesforce組織のデータもまとめられますか?

A. まとめられます。Data Cloud One(料金のページではData 360 One)を使うと、Data 360を持つ組織にほかの組織(コンパニオン組織)をつなぎ、1つのData 360を共用できます(※21)。組織ごとに持つ形もありますが、保守の負担が増えます(※21)。

Q. 中堅・中小企業でもData 360を導入できますか?

A. 導入できます。対象のエディションなら、条件を満たせば無料の枠から始められます(※11)。詳しくは「Salesforceの利用者が無料で始められる範囲」をご覧ください。

Q.「有効化」とは何を指しますか?

A. 2つの意味があります。1つは、Data 360そのものを使い始めるための設定です。有償のライセンスが付与された組織では通常は自動で使える状態になり、無料の枠では管理者が「Your Account」の画面から申し込みます(※12、※11)。もう1つは、作成したセグメントを、Marketing Cloudや広告のプラットフォームなどの配信先へ送る操作のことで、英語のActivationの訳語です(※9)。検索で「Data 360 有効化」と調べる方の多くは前者を指しています。前者の流れは「設定の流れ(Data 360の有効化からセグメント公開まで)」、後者は「条件を指定して顧客のセグメントを作り、配信先に渡す」で説明しています。

Q. Data 360に関する資格はありますか?

A. あります。「Salesforce 認定 Data 360 コンサルタント」で、データ基盤の導入や助言の実務経験がある人が対象です。学習はTrailheadのトレイルで進められます(※22)。AI分野の資格は、記事「SalesforceのAI「Einstein」とは?主要機能や価格、活用事例を解説」にまとめています。

  • 10. 
  • Unisrv AI Powered CRM®による実装支援

ユニファイド・サービスの「Unisrv AI Powered CRM®」では、Data 360による顧客データの整理から、AIの活用、導入後の定着までを支援します。

顧客データの整理とAIの導入をまとめて支援

既存のSFA・MAを統合して実装

導入後の定着まで伴走

使い道の見直しや運用ルールづくりを通じて、現場への定着まで伴走します。利用部門やAIの活用範囲が広がったときの構成の変更にも対応します。


  • 11. 
  • まとめ

  • 12. 
  • 参考・引用元

※1 Trailhead「マーケティング担当者のための Data 360 の基本」:https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/customer-360-audiences-basics/meet-customer-360-for-marketers


※2 Salesforce サクセスナビ「ゼロコピーデータ統合」(2025年10月21日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001154


※3 セールスフォース・ジャパン「Data 360の価格」:https://www.salesforce.com/jp/data/pricing/


※4 セールスフォース・ジャパン「Data 360(旧Data Cloud)」:https://www.salesforce.com/jp/data/


※5 Salesforce「Summer ’23 Release Notes」:https://resources.docs.salesforce.com/244/latest/en-us/sfdc/pdf/salesforce_summer23_release_notes.pdf


※6 Salesforce サクセスナビ「統合プロファイル( ID 解決)」(2025年10月21日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001159


※7 Salesforce Help「Zero Copy Data Federation Supportability」:https://help.salesforce.com/s/articleView?id=data.c360_a_byol_data_federation_supportability.htm&language=en_US&type=5


※8 Treasure Data「Salesforce Export Integration」:https://docs.treasure.ai/ja/int/salesforce-export-integration


※9 Salesforce サクセスナビ「セグメントと有効化」(2025年10月21日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001161


※10 Salesforce サクセスナビ「Data 360 における RAG 関連機能」(2025年7月29日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001135


※11 Salesforce Help「Free Data Cloud Account」:https://help.salesforce.com/s/articleView?language=en_US&id=000396380&type=1


※12 Salesforce サクセスナビ「Data 360 利用開始に必要な初期設定」(2026年8月20日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001319


※13 Salesforce サクセスナビ「「検索インデックス」によるベクトルデータベース構築」(2025年7月29日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001137


※14 Trailhead「Data 360 の 検索インデックス種別について知る」:https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/search-index-types-data-cloud-quick-look/get-to-know-search-index-types-in-data-cloud


※15 Salesforce サクセスナビ「検索役を担う「レトリーバー」」(2025年7月29日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001138


※16 Salesforce「Salesforce Unveils Updates to Drive Simpler, More Accessible Pricing for Data Cloud」(2025年9月12日):https://www.salesforce.com/blog/data-cloud-pricing-updates/


※17 セールスフォース・ジャパン「Salesforce Foundations」:https://www.salesforce.com/jp/crm/foundations/


※18 セールスフォース・ジャパン「Salesforce Data 360で、弁護士ドットコムが事業横断的な顧客データ統合を実現」(2025年10月31日):https://www.salesforce.com/jp/news/press-releases/2025/10/31/bengo4-com-customer-news/


※19 セールスフォース・ジャパン「Salesforce、フェイスネットワークによるAgentforceの導入・活用の取り組みを発表」(2026年9月28日):https://www.salesforce.com/jp/news/press-releases/2026/09/28/faithnetwork-customer-news/


※20 Salesforce サクセスナビ「要件定義を始める前の準備」(2025年10月21日):https://successjp.salesforce.com/article/NAI-001150


※21 Trailhead「Data Cloud One」(単元「Data Cloud One で複数の組織を接続する」):https://trailhead.salesforce.com/ja/content/learn/modules/data-cloud-one-quick-look/connect-multiple-orgs-with-data-cloud-one


※22 Trailhead「Salesforce 認定 Data 360 コンサルタント」:https://trailhead.salesforce.com/ja/credentials/data360consultant

2026年10月27日

“Unisrv AI Powered CRM” に関する
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この記事の監修者

  • 甲斐 博一

    ユニファイド・サービス株式会社 CMO

    グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。

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