Salesforce(セールスフォース)とは、米Salesforce社が提供するクラウド型のCRM(顧客関係管理)プラットフォームです。営業支援(Sales)、カスタマーサービス(Service)、マーケティングなどの製品群と、AI(Einstein/Agentforce)やデータ基盤(Data 360)を、一つの基盤の上で提供します。CRMという単一のアプリケーションではなく、顧客に関わる様々な業務アプリを構築・運用できるプラットフォームだと捉えるのが、2026年時点での正確な理解です。
一方で、「Salesforceを導入すれば売上が上がる」という期待を持って導入したものの、現場では入力作業が増えただけで、データもあまり活用されていない。そんな声を聞くことは珍しくありません。ある調査では、SFA・CRMツールを導入した企業のうち約27%が「効率的に活用できていない」と回答しています(※1)。
本記事は2部構成です。第1部でSalesforceの製品体系、中核機能、導入効果と注意点、向いている企業の条件を整理し、第2部で「導入しただけ」で終わらせないための定着の考え方と、AI時代におけるSalesforceの位置づけを解説します。これから検討する方には判断材料を、すでに導入済みの方には活用のヒントを提供することを目指します。
第1部 Salesforceを理解する
「Salesforce」という言葉を聞いたとき、人によって思い浮かべるものが違います。営業の商談管理画面を思い浮かべる人もいれば、問い合わせ管理やメール配信を思い浮かべる人もいます。どれも正しく、どれも一部です。Salesforceは単一のソフトウェア製品の名前ではなく、Salesforce社が提供するクラウドサービス群の総称だからです。Amazonが通販サイトだけでなくAWSやKindleも提供しているように、Salesforceも目的別に複数のサービスを展開している、とイメージすると分かりやすいでしょう。
もう一段踏み込むと、Salesforceは業務アプリケーションを構築・運用するためのPaaS(プラットフォーム)でもあります。標準の製品を使うだけでなく、自社の業務に合わせた画面や項目、承認フローを、コードをほとんど書かずに組み上げられます。この構造については、Salesforceの三層アーキテクチャを解説したコラムで詳しく扱っています。
2026年時点の製品体系を、担当領域ごとに整理します。基盤となるのが「Agentforce 360 Platform」で、その上に業務領域別の製品が乗り、AIとデータ基盤がそれらを横断して支える構造です。
製品名 | 旧名称 | 担当領域 | 主な機能 |
|---|---|---|---|
Sales Cloud(Agentforce Sales) | Sales Cloud | 営業支援(SFA/CRM) | 取引先・商談管理、パイプライン、売上予測、活動記録 |
Service Cloud(Agentforce Service) | Service Cloud | カスタマーサービス | 問い合わせ(ケース)管理、ナレッジ、チャット、コールセンター |
Marketing Cloud/Account Engagement | Marketing Cloud/Pardot | マーケティング(MA) | メール配信、スコアリング、シシナリオ設計、キャンペーン管理 |
Commerce Cloud | 同左 | EC | BtoB/BtoCのECサイト構築・運営 |
Data 360 | Data Cloud | データ基盤 | 社内外データの統合、リアルタイムの顧客像構築 |
Einstein | 同左 | AI(予測・生成の基盤) | スコアリング、予測、生成AI基盤、Trust Layer |
Agentforce | Einstein Copilot(一部) | AIエージェント | 自律的に業務を実行するAIエージェントの構築・運用 |
Agentforce 360 Platform | Einstein 1 Platform/Salesforce Platform | 基盤 | 上記すべてが動く共通基盤。カスタムアプリ構築、Flow、権限管理 |
ビジネスの現場で「Salesforceを入れる」「CRMを使う」と言われる場合、営業支援を中心としたSales Cloudを指していることがほとんどです。本記事でも、主にSales Cloudの機能を軸に解説を進めます。
Salesforceを理解するうえで避けて通れないのが、CRMとSFAの違いです。この2つは混同されやすいのですが、管理する対象と目的が異なります。
CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、顧客との関係性を軸にします。顧客情報、対応履歴、契約状況を一元管理し、良好な関係を維持・向上させることが目的で、営業だけでなくサービスや経営も使う全社の仕組みです。SFA(Sales Force Automation:営業支援)は、商談・案件を軸にします。営業プロセスを効率化し、受注率や売上を最大化することが目的で、主な利用者は営業部門です。「今月クロージング予定の案件」「商談の進捗ステージ」「売上予測」はSFAの領域です。
これに、見込み客(リード)の獲得と育成を軸にするMA(Marketing Automation)を加えた3つが、Salesforceの製品体系の骨格になっています。
区分 | CRM | SFA | MA |
|---|---|---|---|
軸 | 顧客との関係 | 商談・案件 | 見込み客(リード) |
主な利用者 | 全社(営業・CS・経営) | 営業部門 | マーケティング部門 |
管理対象 | 顧客情報、対応履歴、契約 | 商談、活動履歴、予測 | リード、Web行動、メール反応 |
Salesforce製品 | Sales Cloud/Service Cloud | Sales Cloud | Marketing Cloud/Account Engagement |
実際にはCRMとSFAは重なる機能が多く、Sales Cloudは「CRM機能を持ったSFA」と理解するのが正確です。Salesforceの強みは、この3つがバラバラのツールではなく一つの基盤上で統合されている点にあります。MAで獲得したリードがSFAで商談化され、受注後はCRMとしてサポート履歴が蓄積される。このデータの連続性が、Salesforceが選ばれる理由の大きな部分です。SFAの詳細と選び方は、SFAの解説記事で扱います。
蓄積されたデータは、見やすく可視化されて初めて意味を持ちます。レポートは条件を指定してデータを抽出・集計する機能で、「担当者別売上ランキング」「失注理由の内訳」「業種別の案件数」など様々な切り口で分析できます。ダッシュボードは複数のレポートをグラフ化して一画面にまとめる機能で、車の運転席のメーター類のように、経営者が「会社の状態」を一目で把握する画面を作れます。どちらもドラッグ&ドロップのノーコード操作で作成でき、IT部門に依頼せずに営業部門のメンバーが自分で必要なレポートを作れます。
毎週月曜の朝会でダッシュボードをモニターに投影し、チーム全員で進捗を共有している企業は多くあります。定量情報を全員で確認することで数字への意識が自然と高まり、ミーティングでは定性的な情報交換に集中できるようになります。レポート機能の作り方と活用の詳細は、レポート・ダッシュボードの解説記事を参照してください。
効果 | Before(導入前) | After(活用後) | 効果を出す前提 |
|---|---|---|---|
営業の属人化解消 | エース営業が辞めるとノウハウも顧客情報も失われる | 活動履歴と商談の進め方が組織の資産になり、新人の立ち上がりが早まる | 活動と失注理由が入力されている |
データドリブンな意思決定 | 「なんとなくいけそう」で月末に未達が判明 | 受注確率に基づく着地予測、ボトルネックの数値把握 | 商談フェーズと正確な金額が更新されている |
顧客対応の質の向上 | 担当が変わるたびに同じ説明を強いられる | 誰が対応しても最新の状況を踏まえて話せる | 問い合わせ履歴と商談が同じ基盤にある |
部門間連携の強化 | マーケ・営業・サポートの情報が分断 | リードの商談化率を追跡、Web行動を踏まえた提案、更新提案中の顧客への配慮 | MA・SFA・サービスが統合されている |
4つの効果に共通するのは、「効果を出す前提」の列です。属人化の解消は活動が入力されていて初めて起こり、データドリブンな意思決定は商談が更新されていて初めて成り立ちます。効果はツールが自動的にもたらすものではなく、データが入り続ける運用が生み出すものです。
Salesforceの費用は、ユーザーごとのライセンス費用に加えて、エディション(機能の段階)による違い、AIやData 360などのアドオン、そして導入時の設計・設定費用、運用後の保守・改修費用で構成されます。ライセンス費用だけを見て予算を組むと、導入後に「思ったより高い」となりがちです。金額は構成によって大きく変わるため、本記事では触れませんが、費用の構造を把握したうえで見積もりを取ることを勧めます。エディションの違いはエディション比較の解説記事で整理しています。
ここまでの内容を踏まえて、自社がSalesforceに向いているかを判断するための観点を整理します。「向いていない」は「一生向いていない」ではなく「時期尚早」と読んでください。
観点 | 向いている | 時期尚早 |
|---|---|---|
営業の規模と体制 | 営業担当が複数名おり、マネージャーがパイプラインを管理したい | 営業が数名で、案件は担当者個人の管理で回っている |
部門間の情報共有 | 営業・サポート・マーケで同じ顧客情報を見る必要がある | 顧客接点が営業だけで、他部門との共有ニーズが薄い |
業務の標準化 | 営業プロセスを組織として定義し、改善したい | 商談の進め方が担当者ごとにまったく異なり、揃える意思がない |
拡張と連携 | 会計、名刺、MAなど他システムとの連携や将来の拡張を前提にする | 単機能で足りており、連携の予定がない |
運用体制 | 社内に管理者を置く、または外部パートナーと継続的に組める | 導入後の運用担当を決められない |
AI活用の展望 | 蓄積したデータをAIで活かす計画がある | まずは案件の一覧化ができれば十分 |
判断に迷う場合、軸は2つです。一つは「顧客情報を複数の部門・複数の人で共有する必要があるか」。答えがyesなら、Salesforceの統合基盤としての価値が出ます。もう一つは「導入後に運用を担う人(または会社)が決まっているか」。ここが決まっていない状態で導入すると、注意点3の「定着しない」に直行します。時期尚早と判断した場合も、営業プロセスの定義と入力ルールの整備を先に進めておけば、導入時の立ち上がりが早くなります。エディションの選び方はエディション比較の解説記事を参照してください。
第2部 「導入しただけ」で終わらせない
第1部ではメリットを中心に解説してきましたが、目を背けてはいけない現実があります。Salesforceを導入したものの、現場に定着せずに失敗するケースが少なくない、という点です。TSUIDE社の調査では約27%が「活用できていない」と回答しています(※1)。良いことばかりに見えるSalesforceが、なぜ現場で使われなくなるのでしょうか。

支援の現場で見てきた失敗は、おおむね次の3パターンに整理できます。自社がどれに近いか、症状から照らし合わせてみてください。
パターン | 症状 | 原因 | 処方 |
|---|---|---|---|
目的不明確 | 何が改善されたら成功なのか誰も答えられない。会議でSalesforceの話題が出ない | 「DX推進の一環」「競合が使っているから」で導入し、KPIを設定していない | 解決したい課題を1つに絞り、測定指標を決めてから運用を始める |
運用ルール未整備 | 入力している人としていない人がいる。同じ項目に違う書き方が混在する | 「誰が」「いつ」「何を」入力するかが決まっていない。決めても説明の機会がない | 「フェーズ変更は24時間以内」「会話は必ずメモ」など具体ルールを決め、繰り返し説明する |
データ活用欠如 | 入力はされているが、レポートを誰も見ない。現場に結果が返らない | 「入力→蓄積→分析→改善→成果」のサイクルが分析で止まっている | 週次会議をダッシュボードで行い、入力した結果が現場に返る場を作る |
例えば、ある企業の例では、営業会議の資料が相変わらずExcelで作られており、Salesforceは「会議の後に転記する場所」になっていました。典型的な運用ルール未整備とデータ活用欠如の重なりで、この状態ではどれだけ機能を追加しても使われません。処方は機能ではなく、会議のやり方を変えることでした。
自社の定着状況を確かめるための10項目です。「はい」の数を数えてください。
No | チェック項目 |
|---|---|
1 | Salesforce導入の目的とKPIを、営業担当者が自分の言葉で説明できる |
2 | 週次または月次の営業会議を、Salesforceのダッシュボードを見ながら行っている |
3 | 商談フェーズの更新期限(例:変更から24時間以内)が決まっている |
4 | 失注した商談に、失注理由が入力されている |
5 | 顧客との会話の記録(活動)が、担当者の頭の中ではなくSalesforceに残っている |
6 | 入力項目は必要最低限に絞られており、1件の登録が数分で終わる |
7 | Salesforceに入力すれば、別途の日報・週報を作らなくてよい |
8 | 現場が入力したデータの分析結果が、現場にフィードバックされている |
9 | Salesforceの運用担当(管理者)が社内または外部に決まっている |
10 | 経営層やマネージャーが、Excelの報告ではなくSalesforceの画面で状況を確認している |
「はい」が8個以上なら定着していると言えます。5〜7個なら定着途上で、「いいえ」の項目が改善ポイントです。4個以下なら要注意で、AI機能を追加する前に運用の見直しが先です。
SalesforceのAIは3層で捉えると整理できます。最上位が、目標を与えると自律的に業務を実行する「Agentforce」。中間が、スコアリングや予測、生成AIの基盤、安全装置(Trust Layer)を担う「Einstein」。最下層が、AIが参照する企業固有のデータを統合する「Data 360」と各製品に蓄積されたCRMデータです。上の層は下の層を前提に動きます。かつてEinstein Copilotと呼ばれた会話型アシスタントは、現在はAgentforce Assistantとして提供されています。
Agentforceを使えば、問い合わせの一次対応、見込み客へのフォロー、動きのない商談へのリマインドといった業務を、人間の指示なしにAIエージェントが実行します。2026年時点で、こうした運用は一部の先進企業の話ではなく、本格化の段階に入っています。各層の詳細は、Salesforce Einsteinの解説記事、Agentforceの解説記事、Data 360の解説記事を参照してください。
A. 使えます。中堅・中小企業向けのエディションも用意されています。ただし、営業が数名で案件管理が個人で回っている段階では時期尚早のこともあります。判断の軸は「顧客情報を複数の人・部門で共有する必要があるか」と「運用担当を置けるか」です。エディションの違いはエディション比較の解説記事を参照してください。
「Unisrv AI Powered CRM®」は、単なるライセンス販売やシステム設定にとどまりません。本記事で述べてきたとおり、Salesforceの成否を分けるのはデータの質と現場の定着です。私たちは、お客様の業務課題に合わせた運用設計と定着支援から、Data 360によるデータ整備、EinsteinやAgentforceといったAI機能の実装までを一気通貫でサポートします。エンジニアの多くがSalesforceの技術者である当社の専門チームが、「導入して終わり」ではなく「成果が出るまで」伴走します。
Salesforceを「ただの顧客リスト」で終わらせず、AI時代の強力なビジネスエンジンへと進化させましょう。
※1 株式会社TSUIDE「SFA、CRM導入実態に関する調査」(2022年2月、n=14,035):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000081593.html
※2 Salesforce「Salesforce Ranked #1 CRM Provider for 13th Year」(IDC Worldwide Semiannual Software Tracker、2026年4月):https://www.salesforce.com/news/stories/idc-crm-market-share-ranking-2026/
※3 Salesforce「世界No.1 CRM」(15万社以上の導入実績):https://www.salesforce.com/jp/crm/worlds-number-one-crm/
※4 Salesforce「AppExchangeとは」(国内向けアプリ300以上):https://www.salesforce.com/jp/solutions/appexchange/faq/
・Salesforce「Salesforce(セールスフォース)とは?」:https://www.salesforce.com/jp/products/what-is-salesforce/
・Salesforce「Salesforceの価格」:https://www.salesforce.com/jp/pricing/
・Salesforce Trust(稼働状況・セキュリティ認証):https://trust.salesforce.com/
最終更新日:2026年10月27日(公開日:2025年12月24日)
この記事の著者

甲斐 博一
ユニファイド・サービス株式会社 CMO
グローバルIT企業における23年間のマーケティング経験に経営企画のスキルも加えB2B/B2Cともに経営とマーケティングを結び付けていくことをモットーとする。また、数多くのデジタルマーケティングおよびECの立ち上げや衰退ビジネスの立て直しも経験し、Webサイトを事業に貢献させてきた経歴を持つ。現在はユニファイド・サービスにて、B2B領域のビジネスにフォーカスし、CMOとしてマーケティングを推進すると同時に、新規事業計画と成長を支援する活動を並行して実践中。経営とマーケティング、事業企画、そしてリーダーシップを次世代に伝えていくための活動もライフワークとして行っている。